ブラジル・ワールドカップ_出場32か国の「通信簿」_スペイン [ダイジェスト特別版]
4 ：グループＢ
スペイン 総合評価：Ｅ+（落胆しか残らない＝未来への収穫_大） 最終結果 → グループリーグ敗退（1勝0分け2敗／4得点・7失点）
評者：ダビド・アルベルダ（元スペイン代表／現TV解説者）
【ゼロトップ・システムを 継続していればという思いが】
落胆という言葉以外出て来ない。だってそうだろ？ 連覇を期待されていたチームが、僅か2試合で決勝トーナメント進出の望みが絶たれてしまったんだから。厳しい言い方だけど、彼らに言い訳の余地はないね。
多くの選手は、ビッグトーナメントに挑む気構えが出来ていないばかりか、フィジカルコンディションも良くなかった。つまり、心身両面に問題を抱えた状態で、ワールドカップの本番を迎えてしまったんだ。
オランダ戦の後半、立て続けに4失点を喫したのも、一人ひとりの運動量が圧倒的に不足していたから。それがひいては、攻撃面でも意外性を欠く結果に繋がった。多彩なパスワークが持ち味のスペインが、終始単調な攻撃を繰り返していたのもそのためさ。
王者の威信を失う切っ掛けとなったのは、オランダ戦の前半終了間際に決められたファン・ペルシの同点ゴールと見て、まず間違いない。あの1点がスペイン代表に与えた精神的ショックには計り知れないモノがあった。それは、後半のプレーを見れば明らか。結局彼らは、タイムアップの笛を聞くまで、“グロッキー状態”から抜け出せなかった。
5失点を食らったショックを払拭するのに、5日では足りなかったようだね。続くチリ戦も動きが重く、結局0-2の完敗を喫してしまった。3戦目のオーストラリア戦でメンバーを大幅に入れ替えたのは正しい判断。ファンフラン、アルビオル、コケ、ビジャ、ＧＫのレイナと、新たに先発で起用された選手は溌剌とした動きを披露し、チームに活力を与え、プレーの内容が劇的に向上した。
「世代交代を怠った罰だ」、「23人の選考に問題がアッタのでは」、デル・ボスケ監督には様々な批判が寄せられている。ただ俺は、監督自身が信頼する選手を選んだソノ決断が、誤りだったとは思わない。もっとも前回のワールドカップ、2年前のユーロと、過去2回のメジャートーナメントで冴え渡った采配が今回不発だったのは事実。とりわけ戦術面で気になったのが、スペインが得意とするポゼッションフットボールが機能しなかった時の、攻撃のオプション不足だ。
これはセスクを偽のＣＦとして起用するゼロトップ構想の放棄と、無関係ではない。2年前のユーロでは、このポジションで起用されたセスクが戦術上のキーマンとなって活躍し、前人未到のメジャー大会3連覇を成し遂げた。ところが今回、デル・ボスケ監督は最初の2試合で純然たるＣＦタイプのＤ・コスタを最前線に置いた。これが、裏目に出た。アトレティコで大活躍を見せたこのストライカーは、コンビネーション不足を露呈し、期待に応える働きが出来なかったんだ。
誤解しないでほしい。俺はなにもＤ・コスタがスペイン代表のレギュラーに相応しくないと言いたいワケではない。フットボールではいくら素晴らしい選手を揃えても、こうしたディテールの違いが勝敗を左右する決定的な要因になるケースがあるんだ。ただ、もしゼロトップ・システムを継続していれば、という思いがどうしても拭い切れなくてね。
ベストプレーヤーはイニエスタしかイナイだろう。王者の風格を漂わせていたのは彼だけだ。ワーストプレーヤーについては、名指しで批判するのは好きじゃないので回答を控えさせてください。ただ、オランダ戦でロッベンとファン・ペルシのスピードに翻弄された守備陣、とりわけ両ＣＢのパフォーマンスは気になった、とだけ言っておこう。
今回の結果を受けて、メディアでは「サイクルの終焉」が盛んに取り沙汰されている。ただ、メンバーを入れ替えるにしても、戦術オプションをどのように増やすかを、まずはしっかり考えるべきだろう。
次代の代表チームを担う選手として真っ先に名前を挙げたいのはセスクだ。前述したように、ラ・ロハ（スペイン代表の愛称）はゼロトップ・システム採用時の方がクオリティーの高いプレーをする。そして現代表で偽のＣＦに適した選手は、彼以外に考えられない。セスクがバイタルエリアでイニエスタやシルバといったボールプレーヤーを頻繁にパス交換をすれば、攻撃は活性化され、おのずと崩しのオプションが増える。更にヘスス・ナバスのようなウインガーが加われば、攻撃に幅がもたらされるはずだ。
《ワールドサッカーダイジェスト：2014.8.7号_No.416_記事》
{{月２回刊：第１・第３木曜日発売＿全国書店・コンビニ}}
スペイン 総合評価：Ｅ+（落胆しか残らない＝未来への収穫_大） 最終結果 → グループリーグ敗退（1勝0分け2敗／4得点・7失点）
評者：ダビド・アルベルダ（元スペイン代表／現TV解説者）
【ゼロトップ・システムを 継続していればという思いが】
落胆という言葉以外出て来ない。だってそうだろ？ 連覇を期待されていたチームが、僅か2試合で決勝トーナメント進出の望みが絶たれてしまったんだから。厳しい言い方だけど、彼らに言い訳の余地はないね。
多くの選手は、ビッグトーナメントに挑む気構えが出来ていないばかりか、フィジカルコンディションも良くなかった。つまり、心身両面に問題を抱えた状態で、ワールドカップの本番を迎えてしまったんだ。
オランダ戦の後半、立て続けに4失点を喫したのも、一人ひとりの運動量が圧倒的に不足していたから。それがひいては、攻撃面でも意外性を欠く結果に繋がった。多彩なパスワークが持ち味のスペインが、終始単調な攻撃を繰り返していたのもそのためさ。
王者の威信を失う切っ掛けとなったのは、オランダ戦の前半終了間際に決められたファン・ペルシの同点ゴールと見て、まず間違いない。あの1点がスペイン代表に与えた精神的ショックには計り知れないモノがあった。それは、後半のプレーを見れば明らか。結局彼らは、タイムアップの笛を聞くまで、“グロッキー状態”から抜け出せなかった。
5失点を食らったショックを払拭するのに、5日では足りなかったようだね。続くチリ戦も動きが重く、結局0-2の完敗を喫してしまった。3戦目のオーストラリア戦でメンバーを大幅に入れ替えたのは正しい判断。ファンフラン、アルビオル、コケ、ビジャ、ＧＫのレイナと、新たに先発で起用された選手は溌剌とした動きを披露し、チームに活力を与え、プレーの内容が劇的に向上した。
「世代交代を怠った罰だ」、「23人の選考に問題がアッタのでは」、デル・ボスケ監督には様々な批判が寄せられている。ただ俺は、監督自身が信頼する選手を選んだソノ決断が、誤りだったとは思わない。もっとも前回のワールドカップ、2年前のユーロと、過去2回のメジャートーナメントで冴え渡った采配が今回不発だったのは事実。とりわけ戦術面で気になったのが、スペインが得意とするポゼッションフットボールが機能しなかった時の、攻撃のオプション不足だ。
これはセスクを偽のＣＦとして起用するゼロトップ構想の放棄と、無関係ではない。2年前のユーロでは、このポジションで起用されたセスクが戦術上のキーマンとなって活躍し、前人未到のメジャー大会3連覇を成し遂げた。ところが今回、デル・ボスケ監督は最初の2試合で純然たるＣＦタイプのＤ・コスタを最前線に置いた。これが、裏目に出た。アトレティコで大活躍を見せたこのストライカーは、コンビネーション不足を露呈し、期待に応える働きが出来なかったんだ。
誤解しないでほしい。俺はなにもＤ・コスタがスペイン代表のレギュラーに相応しくないと言いたいワケではない。フットボールではいくら素晴らしい選手を揃えても、こうしたディテールの違いが勝敗を左右する決定的な要因になるケースがあるんだ。ただ、もしゼロトップ・システムを継続していれば、という思いがどうしても拭い切れなくてね。
ベストプレーヤーはイニエスタしかイナイだろう。王者の風格を漂わせていたのは彼だけだ。ワーストプレーヤーについては、名指しで批判するのは好きじゃないので回答を控えさせてください。ただ、オランダ戦でロッベンとファン・ペルシのスピードに翻弄された守備陣、とりわけ両ＣＢのパフォーマンスは気になった、とだけ言っておこう。
今回の結果を受けて、メディアでは「サイクルの終焉」が盛んに取り沙汰されている。ただ、メンバーを入れ替えるにしても、戦術オプションをどのように増やすかを、まずはしっかり考えるべきだろう。
次代の代表チームを担う選手として真っ先に名前を挙げたいのはセスクだ。前述したように、ラ・ロハ（スペイン代表の愛称）はゼロトップ・システム採用時の方がクオリティーの高いプレーをする。そして現代表で偽のＣＦに適した選手は、彼以外に考えられない。セスクがバイタルエリアでイニエスタやシルバといったボールプレーヤーを頻繁にパス交換をすれば、攻撃は活性化され、おのずと崩しのオプションが増える。更にヘスス・ナバスのようなウインガーが加われば、攻撃に幅がもたらされるはずだ。
《ワールドサッカーダイジェスト：2014.8.7号_No.416_記事》
{{月２回刊：第１・第３木曜日発売＿全国書店・コンビニ}}
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