ブラジル・ワールドカップ_出場32か国の「通信簿」_フランス [ダイジェスト特別版]
5 :グループE
フランス 総合評価:B+(賞賛できる=未来への収穫_大) 最終結果 → ベスト8(3勝1分け1敗/10得点・3失点)
評者:クリストフ・デュガリー(元フランス代表/現TV解説者)
【4年前とは比較にならない 実に心地良い敗退だった】
私はよく、フランス代表に対して少し手厳しいと言われる。だがそれは、フランス代表が一般に思われている以上に沢山のモノを背負っているからなんだ。単なるフットボールチームなどではない。
それを前提に評価しても、今大会のパフォーマンスは興味深く、ポジティブなモノだった。ただ、サポーターとオブザーバーは、98年大会との比較をちょっと急ぎすぎたように思う。そういう私も同じで、98年の時のように大会が進むに連れてチームがパワーアップしていくだろうと信じていた。
でも残念ながら、そうはならなかった。尻上がりに調子が良くなるという期待を裏切られたのは、キックオフ時間が影響した部分もアッタと思う。ナイジェリア戦、ドイツ戦と決勝トーナメントに入ってからの2試合はいずれも真っ昼間の13時スタートで、フランスは時間の経過とともにパワーを失っていった。
グループリーグのスイス戦では、猛烈なプレッシングとスピーディーな攻撃を軸にクオリティーの高いパフォーマンスを見せてくれた。観ていてワクワクしたよ。ところが決勝トーナメント以降は、フィジカルコンディションの落ち込みとともにクオリティーが低下し、そのうえ何人かの選手の振る舞いが変わってしまった。特にアタッカー陣の豹変ぶりには困惑させられたよ。
ナイジェリア戦では、前線の3人が守備のタスクをこなさなかった。しかもこの試合では、マテュイディとともにアグレッシブなプレーで中盤を支えていたシッソコがスタメン落ち。そのためプレス機能が低下して、思うようにボールを奪回できなかった。正直私は、既にこの時点で先行き不安を覚えていた。
アタッカー陣のネガティブな変化は、もしかすると、継続的にスタメンで起用されなかったジルーの不満が他の選手に伝染したからかも知れない。彼には不平を言う権利などないんだけどね。フットボール人生とはそういうモノで、特にワールドカップの大舞台でわだかまりを持つなど、アッテはならない。ベンゼマが最初の2試合でとてもいいパフォーマンスを見せ、リーダとしての自覚を窺わせていただけに、なおさら残念に思う。そのベンゼマにしても、3戦目からは力をセーブしているかのような印象を受けた。
アクシデントもアッタ。サコの怪我だ。第2戦で大腿を痛めたサコの使い方に、ディディエ(デシャン監督)は腐心していた。負傷したスイス戦、更にナイジェリア戦とドイツ戦でもやむなく途中で彼をベンチに下げ、そのうち2回はコシエルニー、1回はヴァランヌを代わりに投入した。特にワールドカップのような大会では、これはノーマルとは言えない。監督はオフェンシブな選手を投入するために交代枠を使うべきなんだ。
それでも今大会のフランス代表は良くやったと思う。大きな快挙こそ成し遂げられなかったが、希望を与えることには成功した。フランス代表の未来には、本物の希望がアルと言っていいだろう。
私はジャッケ監督の下でEURO96を経験した。彼は当時、2年後に控えていた自国開催のワールドカップから逆算して仕事を進めていた。意外に思われるかも知れないが、EURO96の登録メンバーのうち、98年ワールドカップにエントリーされたのは11人だけだったんだ。ただ今度のEUROには、今大会のメンバーからヨリ多くの選手が参戦するだろうと思う。ヴァランヌ、ポグバ、グリーズマンといった若者たちは、既にチーム内で地位を確立したからだ。例えばグリーズマンはゴールもアシストもなかったとはいえ、質の高いプレーを披露し、今後リベリを呼び戻すかどうかという問題を提起してみせた。
今回のブラジル・ワールドカップは実り多き大会となった。悔いが残るのはただひとつ。コロンビアのような強烈な軌跡を残すまでには至らなかったことだ。ドイツ戦では少し臆病になり、窒息したかのようなパフォーマンスに終わってしまった。それでも、EURO08や4年前を思い返せば、比較にならないほど実に心地良い敗退だった。
《ワールドサッカーダイジェスト:2014.8.7号_No.416_記事》
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フランス 総合評価:B+(賞賛できる=未来への収穫_大) 最終結果 → ベスト8(3勝1分け1敗/10得点・3失点)
評者:クリストフ・デュガリー(元フランス代表/現TV解説者)
【4年前とは比較にならない 実に心地良い敗退だった】
私はよく、フランス代表に対して少し手厳しいと言われる。だがそれは、フランス代表が一般に思われている以上に沢山のモノを背負っているからなんだ。単なるフットボールチームなどではない。
それを前提に評価しても、今大会のパフォーマンスは興味深く、ポジティブなモノだった。ただ、サポーターとオブザーバーは、98年大会との比較をちょっと急ぎすぎたように思う。そういう私も同じで、98年の時のように大会が進むに連れてチームがパワーアップしていくだろうと信じていた。
でも残念ながら、そうはならなかった。尻上がりに調子が良くなるという期待を裏切られたのは、キックオフ時間が影響した部分もアッタと思う。ナイジェリア戦、ドイツ戦と決勝トーナメントに入ってからの2試合はいずれも真っ昼間の13時スタートで、フランスは時間の経過とともにパワーを失っていった。
グループリーグのスイス戦では、猛烈なプレッシングとスピーディーな攻撃を軸にクオリティーの高いパフォーマンスを見せてくれた。観ていてワクワクしたよ。ところが決勝トーナメント以降は、フィジカルコンディションの落ち込みとともにクオリティーが低下し、そのうえ何人かの選手の振る舞いが変わってしまった。特にアタッカー陣の豹変ぶりには困惑させられたよ。
ナイジェリア戦では、前線の3人が守備のタスクをこなさなかった。しかもこの試合では、マテュイディとともにアグレッシブなプレーで中盤を支えていたシッソコがスタメン落ち。そのためプレス機能が低下して、思うようにボールを奪回できなかった。正直私は、既にこの時点で先行き不安を覚えていた。
アタッカー陣のネガティブな変化は、もしかすると、継続的にスタメンで起用されなかったジルーの不満が他の選手に伝染したからかも知れない。彼には不平を言う権利などないんだけどね。フットボール人生とはそういうモノで、特にワールドカップの大舞台でわだかまりを持つなど、アッテはならない。ベンゼマが最初の2試合でとてもいいパフォーマンスを見せ、リーダとしての自覚を窺わせていただけに、なおさら残念に思う。そのベンゼマにしても、3戦目からは力をセーブしているかのような印象を受けた。
アクシデントもアッタ。サコの怪我だ。第2戦で大腿を痛めたサコの使い方に、ディディエ(デシャン監督)は腐心していた。負傷したスイス戦、更にナイジェリア戦とドイツ戦でもやむなく途中で彼をベンチに下げ、そのうち2回はコシエルニー、1回はヴァランヌを代わりに投入した。特にワールドカップのような大会では、これはノーマルとは言えない。監督はオフェンシブな選手を投入するために交代枠を使うべきなんだ。
それでも今大会のフランス代表は良くやったと思う。大きな快挙こそ成し遂げられなかったが、希望を与えることには成功した。フランス代表の未来には、本物の希望がアルと言っていいだろう。
私はジャッケ監督の下でEURO96を経験した。彼は当時、2年後に控えていた自国開催のワールドカップから逆算して仕事を進めていた。意外に思われるかも知れないが、EURO96の登録メンバーのうち、98年ワールドカップにエントリーされたのは11人だけだったんだ。ただ今度のEUROには、今大会のメンバーからヨリ多くの選手が参戦するだろうと思う。ヴァランヌ、ポグバ、グリーズマンといった若者たちは、既にチーム内で地位を確立したからだ。例えばグリーズマンはゴールもアシストもなかったとはいえ、質の高いプレーを披露し、今後リベリを呼び戻すかどうかという問題を提起してみせた。
今回のブラジル・ワールドカップは実り多き大会となった。悔いが残るのはただひとつ。コロンビアのような強烈な軌跡を残すまでには至らなかったことだ。ドイツ戦では少し臆病になり、窒息したかのようなパフォーマンスに終わってしまった。それでも、EURO08や4年前を思い返せば、比較にならないほど実に心地良い敗退だった。
《ワールドサッカーダイジェスト:2014.8.7号_No.416_記事》
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