SSブログ

ITALY 根拠に乏しい「楽観主義的な興奮」 [THE JOURNALISTC]

[サッカー][目] [耳]  [手(グー)]
セリエA(アー)  《ジャンカルロ・パドバン記者》
EURO予選を楽々突破したイタリア代表を、本大会での優勝候補に挙げる声も聞こえてくる。国内で支配的なそうした楽観主義的な興奮には、しかし説得力十分の根拠があるのだろうか。冷静に考えれば、不安が拭えない。

理解し難く大袈裟なのが 国内での手放しの賞賛ぶり
予選2試合を残し、楽々本大会行きのチケットを手に入れたいタリア代表。68年大会以来の欧州制覇へ、国内の期待は一気に膨らむが。
【イタリアのサッカー界は今、無根拠な楽観主義的興奮に包まれている。EURO2012の予選に臨んでいたイタリア代表が、グループ首位で楽々と本大会への出場権を確保したからだ。10試合を8勝2分けで乗り切り、すなわち1敗もせず、僅かに2失点を喫しただけ。確かにそうなのだが、目に余る覇者戯ようである。1年あまり前の南アフリカ・ワールドカップでアッズーリが晒した醜態を、少しでも早く忘れたいからでもあるのだろう。しかし、私に言わせれば、予選突破の背後にある厳然たる事実を認めようとする向きがあまりにも少な過ぎる。
 イタリアが引き当てたのは、予選全9組の中で最も楽なグループだった。それだけではない。セルビアとの直接対決は敵サポーターの暴動で没収・中止となり、UEFAの裁定でイタリアの勝利となった(スコアは3ー0)。格下ばかりのグループ内で唯一と言えるこの強敵と、戦わずして勝ち点3を得るという幸運にも恵まれたのだ。実際、この10月7日に敵地で臨んだセルビア戦は、既に予選を突破した後という余裕の立場にありながら、結果は1ー1の引き分けに終わっている。
 いくら何でも厳し過ぎる評価だと、私の見解に批判的な人々は、むしろポジティブな結果だったと、セルビアと引き分けたイタリア代表を擁護する。・・・(略)・・・。
( ー 中 略 ー )
 イタリアが組み込まれたグループCは最も楽だったという、私の見解を補強する材料は他にもある。2位でフィニッシュしたエストニアは、FIFAランキングが58位という国だ。11月のプレーオフを戦う各グループ2位の8チーム中、エストニアのランクが最も低い。
 こうした事実に目を向ければ、2試合を残して1位での予選通過を決めたとはいえ、取り立てて持ち上げるほどの偉業とは言えないだろう。理解し難いのはイタリア国内での手放しの賞賛ぶりで、来年の本大会でも優勝候補になると騒ぎ立てている。私に言わせれば、大袈裟だ。EURO本大会への進出を決めた国の中には、イタリアよりも強いチームが少なくとも4つある。スペイン、オランダ、ドイツ、そしてイングランドは、客観的に見てイタリアの上を行っている。
 念のため付け加えておけば、欧州選手権でのイタリアの優勝は1968年大会の一度きり。しかも自国開催の大会で、レフェリーの“手助け”があればこその戴冠だった。ソ連との準決勝は引き分けに終わり、ファイナル進出の権利は抽選で手に入れた。その抽選が疑惑に満ちていた。コイントスの結果を誰ひとり見ないまま、イタリアの勝利が宣言されたのだ。】

看過できない守備の問題は CBとサイドバックに___
イタリア代表のチェーザレ・プランデッリ監督はアッズーリの再構築という難仕事を、南アフリカでのあの惨敗から僅か1年余りで見事に成し遂げた。そんなふうに持ち上げる声もあるが、賛同は出来ない。現在の代表を支える面々、ジャンルイジ・ブッフォン、ジョルジョ・キエッリーニ、アンドレア・ピルロ、(以上はユベントス)、ダニエレ・デ・ロッシ(ASローマ)はいずれも、マルチェロ・リッピ前監督の下で南アフリカ・ワールドカップを戦っている。チームの土台が変わったわけではない。
 まるでバルセロナのようだったと、イタリア代表の予選での戦いぶりを褒めそやす者までいる。大きく高まったボール支配率を根拠としているようだ。プランデッリ監督がグラウンダーのパスを繋ぐ組み立てを志向していたのは確かだが、これだけ楽なグループで格下ばかりを相手にしていたのだから、ボールポゼッションが高まらない方がどうかしているだろう。
 それにボールを支配していたわりには、得点が多くない。予選10試合の合計で20ゴールだ。同じ10試合でオランダは37ゴール、ドイツは34ゴールを挙げている。とりわけアウェーで苦しみ、エストニアには2ー1の辛勝、ベルファストでの北アイルランド戦はスコアレスドローに終わっている。いくら敵地とはいえ、FIFAランクが126位のフェロー諸島との対戦ですら、1ー0という僅差の勝利だったのだ。
 こうして改めて振り返ってみても、イタリアの戦いぶりが絶賛されるような内容だったとは到底思えない。むしろどうしてここまで褒めちぎられるのかと、首をかしげる以外にない。当のプランデッリ自身が、ハッキリと語っているではないか。イタリアは得点が少なかったし、守備の局面ではリスクを冒し過ぎていたようだと。
 ディフェンスの問題は、キエッリーニの相棒となるCBだ。レギュラー定着が期待されるアンドレア・ラノッキア(インテル・ミラノ)に故障が多く、予選ではキエッリーニとペアを組む機会が少なかった。信頼に値するパートナーが不在だったのは、それゆえでもアルだろう。
 両サイドバックの守備力の低さも、看過できない問題だ。・・・(略)・・・。
 戦力的に満足できるレベルにあるのは質・量ともに中盤だ。・・・(略)・・・。プランデッリが中盤をロンボ(菱形)にした4ー3ー1ー2システムを採用しているのは、こうしたMFのタレントをより活用するためだ。中央の人口密度を高めてポゼッションを安定させるべく、攻撃の幅は犠牲にする。同時に、最終ラインをしっかりとプロテクトできるシステムを選んだわけである。】

極端なところがある指揮官 新戦力の抜擢に慎重過ぎる
●スタンダードとなりつつあるのは、小兵二人の2トップ。高いボール支配率の割に得点が伸びないのは問題だ。
●EUROの出場権という最低限のノルマは果たしたプランデッリ。来年の大舞台で、W杯の汚名を返上できるか。
繰り返すが、ポゼッションをフィニッシュになかなか結び付けられないのが予選を終えた今も残っている問題だ。2トップが裏のスペースを突いたり、MFが後方から縦に走り込んだりという崩しのプロセスが、明らかに物足りない。
 今のところ機能性が高いのは、ジュゼッペ・ロッシ(ビジャレアル)とアントニオ・カッサーノ(ミラン)、あるいはセバスティアン・ジョビンコ(パルマ)というモビリティーが十分なFWを2枚並べた時の方だ。・・・(略)・・・。
( ー 中 略 ー )アルゼンチン出身のオスバルドは、ブラジル出身のアマウリ(ユベントス)とチアゴ・モッタ(インテル)、アルゼンチン出身のクリスティアン・レデスマ(ラツィオ)に続く、現政権下で4人目のオリウンド(イタリア移民をルーツに持ち外国人)ということになる。
 私は北部同盟(北イタリアの独立を政策に掲げる右派政党)の支持者ではないし、オリウンドに対する反感を持っていない。代表選手がイタリアの国歌を歌おうが歌うまいが、どちらだろうと気にしない。ちなみに昔は、歌わないのが普通だった。重要なのは、自分が代表する国とそのユニホームをリスペクトしているかどうかなのだ。
 我慢ならないのは、オリウンドの招集を正当化するためにプランデッリが用いた「新イタリア人」という表現だ。認識自体が間違っている。オリウンドはオリウンドであり、新イタリア人と呼ばれるべきなのはイタリアで生まれ育ち、サッカー的にもイタリアのカルチャーを身に付けた二重国籍の保有者達である。・・・(略)・・・。
 セリエBのトリノに所属する23歳の(両親がナイジェリア人)アンジェロ・オグボンナはラツィオ州で生まれ、トリノの育成部門で育てられた。この3シーズンはセリエBでプレーしているが、リバプールなどのビッグクラブが獲得に乗り出すほどのタレントだ。EURO本大会の出場を決めた後の10月の予選2試合で、ナゼ出番を与えなかったのかを、私は不思議に思っている。今後、本大会までの親善試合で試しておくべきだろう。
 プランデッリという監督には、極端なところがある。お気に入りの選手を辛抱強く使い続ける一方で、台頭した新戦力の抜擢にいささか慎重過ぎるのだ。代表監督に就任した当初の1年前は、バロテッリとカッサーノがチームの大黒柱になると明言した。顔をしかめたのは、私だけではない。・・・(略)・・・。
 その一方で、例えばイグナツィオ・アバーテ(ミラン)、アレッシオ・チェルチ(フィオレンティーナ)、そしてオグボンナといったクラブレベルで十分の実績を重ねている選手が、代表ではチャンスを与えられずにいる。率直に言って、いただけない用兵だ。本大会までの限られて時間の中で、プランデッリが如何に新戦力を試し、本番を戦うためのグループを作り上げて行くのか。引き続き注視して行きたい。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.11.3号_No.350_記事》
{{月2回刊:第1・第3木曜日発売_全国書店・コンビニ}}




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。