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GERMANY ミュラーをドイツ代表のCFに!! [THE JOURNALISTC]

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ブンデスリーガ  《ルドガー・シュルツェ記者》
22歳でドイツ代表のレギュラーに君臨するミュラー。複数のポジションをこなす万能性を備えた彼に期待されるのは、ゴメスとクローゼ以外に頼れる存在が見当たらないCFへのコンバートだ。レーブ監督も太鼓判を押す。

難局であればあるほどに 救世主として輝ける選手だ
●5節まで無得点だったミュラーだが、チームへの貢献度は依然として特大。数字だけを論拠に彼の限界を論じるのは、無意味な作業だ。
●ミュラーが真骨頂を発揮したのが、9月6日のポーランド戦。68分には果敢な突破で相手のファウルを誘い、PKを奪う。
【5節を消化したブンデスリーガで、トーマス・ミュラーは未だ得点していない。4勝1敗で首位を走るバイエルン・ミュンヘンの総得点は16。1試合平均得点が3ゴールを超える驚異的な数字だが、得点者リストにミュラーの名前はない(編集部・注:その後、6節と7節で1ゴールずつマークした)
 ドイツ代表でも、過去7試合、つまり3月26日のカザフスタン戦で2得点を挙げたのを最後に、快音が聞かれない。FWがこれだけゴールから見放されれば、たちまちのうちに「クライシス(危機)だ!!」と大きな見出しが新聞に躍るものだ。
 だが、クライシスなどでは決してない。確かに、5ゴールを挙げて大会得点王に輝いた南アフリカ・ワールドカップでの活躍が印象的だった分、不発が続く現状に余計物足りなさを感じるかも知れないが、そうした見方は一面的であり、ミュラーの本質をまったく理解していないと言える。
 ハッキリ言おう。彼は停滞どころか、着実に進化を続けている。数字だけを論拠にこの22歳の限界を論じるのは、無意味な作業なのだ。プレーのクオリティー、勝利への貢献度を検証すれば、ミュラーの真価が見えて来る。
 代表的な例を、ここで挙げてみよう。9月6日、敵地グダニスクに乗り込んだポーランドとのフレンドリーマッチは、まさにミュラーの魅力が凝縮したゲームだった。
 既にEURO2012年の本大会出場を決めていたドイツはこの日、1.5軍のメンバーで試合に臨んだ。守護神のマヌエル・ノイアーを初め、MFのバスティアン・シュバインシュタイガー、メスト・エジル、FWのマリオ・ゴメスら主軸を遠征に帯同させず、経験の浅い若手を軸に据える布陣。試合は開始直後からドイツが圧倒した。
( ー 中 略 ー )
 ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督は、親善試合の敗戦に目くじらを立てて憤怒するようなタイプではない。とはいえ無抵抗のまま勝利を譲るほど、お人好しでもない。試合の流れを変えるカード、いわばジョーカー役に「ミュラー」を指名したのは、60分を過ぎた時だった。
 すると、ルーカス・ポドルスキに代わってピッチに入ったミュラーは、残りの30分で真骨頂を発揮してみせるのだ。投入から8分後だった。・・・(略)・・・。ホイッスルが鳴った。PKだ。これをトニ・クロースが冷静に沈めて、同点とする。
 ただ、試合は1ー1のままでは終わらなかった。90分、DFラインの裏に落ちたボールの処理にもたつき、その隙を相手に突かれてしまうのだ。・・・(略)・・・。ヤクブ・プラシュチコフスキに、このPKを決められてスコアは1ー2に。試合終了間際のゴールは、地元ポーランドに勝利をもたらしたも同然だった。
 魔の時間帯に決勝ゴールを決めるのは、ドイツのお家芸。いわばお株を奪われた格好だった。・・・(略)・・・。しかしながら、既に90分を回っている。再び同点に持ち込むには、あまりに難しい状況ダ。しかも親善試合である。ここから1点を取り返そうと本気で考える選手が、果たしているだろうか。だが、いたのである。それがミュラーだった。
 ロスタイムに突入してからも、ミュラーは虎視眈々とチャンスを狙っていた。「未だ勝負が決まったわけじゃない」と、冷静さを失わずに。物静かで、余り感情を表に出すタイプではないが、しかしミュラーの内面は、強烈な勝者の意識で常に溢れている。
 93分、右サイドでボールを受けたミュラーは、対峙する相手をフェイントで牽制しながらペナルティーエリア内に進入。縦に抜けようとした時だった。目の前のDFが、突然、足を滑らせ体勢を崩したのだ。その隙を、ミュラーは見逃さなかった。敵陣内の奥深くまで一気に抉り、低いセンタリングでカカウの同点弾をアシストしてみせたのである。試合終了のホイッスルが吹かれたのは、その直後。ドイツは土壇場で引き分けに持ち込んだのだ。
 この日の活躍で、ミュラーの重要性は改めて証明された。ミュラー投入の前と後では、チームの動きの幅と質が明らかに違っていた。彼ほど劣勢の状況を覆そうと知恵を絞り、それを実行できるプレーヤーはイナイ。非常時であればあるほど、救世主として燦然と輝く選手、それがミュラーなのだ。
 特定の選手を名指しで褒め称えることが殆どないレーブ監督も、ミュラーには賛辞を惜しまない。
「対戦相手は、どうすれば彼をストップできるかを思案するだろうが、簡単にアイデアなんて浮かばないだろう。結局はファウルで止めるしかなく、PKを与えてしまうのだ」】

自分がプレーしていれば... そんな悔恨の念を今でも
【ドイツ代表のサッカーは長年、「創造性に欠け、面白くない」と言われ続けてきた。だが、現在のチームはそうした固定概念を覆す史上もっとも面白味に溢れたサッカーを展開。同時にチーム内では、史上最も厳しい生存競争が繰り広げられている。2006年と10年のワールドカップはいずれも3位、EURO2008は準優勝と一定の結果も残しており、暗黒の時代に完全にピリオドを打った印象だ。
 昨年のワールドカップから1年以上が経過した現在、チームは新たな問題に直面している。それは、「優れた選手が多過ぎて、レギュラー選定が難しい」という何とも贅沢な悩みである。数十年にひとりの超新星マリオ・ゲッツェを、どのポジションでどう起用すべきか、ポドルスキをベンチに座らせていいものか、ウインガーの逸材達(アンドレ・シュールレ、マルコ・ロイス、ケビン・グロスクロイツ)の扱いは...といった具合にだ。ただ、人材がこれだけ揃っていても、ミュラーは外せない。ノイアー、エジル、シュバインシュタイガー、ゴメスと同様、代えの利かない選手である。
 まさに充実の一途を辿るドイツ代表。聞こえてくるのは、「スペインを倒す日も近い」という声だ。ミュラーにとって「スペイン」の4文字はしかし、忌々しくもあり、また落胆を連想させる単語である。
 南アフリカ・ワールドカップ準決勝での敗戦(0ー1)を、誰より引きずっているのはミュラーかも知れない。何故なら彼は、スペイン戦のピッチに立てなかったからだ。4ー0の快勝を収めた準々決勝のアルゼンチン戦で、ハンドの反則を犯してイエローカードを受けたミュラーは、サスペンションによりスペイン戦に出場する権利を失ってしまったのである。自分がプレーしていれば、結果は違っていたかも知れない___。そんな悔恨の念を、今も抱いているはずだ。

本人が希望し監督も認める 「センター」へのコンバート
期待されるのはCFへのコンバート。将来的にはゴメスの後を継げるタレントだと、レーブ監督も前向きだ。
【ミュラーのプレーは、独創的かつ効果的である。とりわけ特筆に値するのが、オフ・ザ・ボールの動き。試合中、ミュラーは誰もが想像しないポイント、誰もが注意を払わないフリーのスペースに、しばしば出没する。多くの選手、観客がボールの行方を追う中で、ミュラーだけは別のイメージを描いていて、突然、決定的な場面に顔を出すのだ。これこそがミュラー最大の武器である。細長い脚と薄っぺらな胸板は頼りなく、エレガントさに欠けるが、クールでクレバーなプレースタイルは老獪さを備え、ゲーム展開を一瞬で劇的に変化させる彼の能力は、既に世界のトップレベルにある。これで未だ22歳というから、驚くほかない。
 複数のポジションに対応する万能性も、魅力のひとつだ。代表では中盤の右サイドが主戦場だが、ただ本人は「センターでプレーするのが、一番好き」だと言う。ならばと、近い将来のコンバートを期待するのは、私だけではないだろう。ミュラーに任せたい「センター」のポジションが、ドイツ代表にはアルからだ。
 現在、1トップのレギュラーはゴメスで、2番手がクローゼ。この二人は不動の存在だ。だが、他に全幅の信頼を置けるFWが見当たらない。シュテファン・キースリンク(バイヤー・レバークーゼン)とパトリック・ヘルメス(VfLヴォルフスブルク)は、クラブでのパフォーマンスが今ひとつ。ユリアン・シーバー(VfBシュツットガルト/22歳)、リヒャルト・スクタ=パス(1FCカイザースラウテルン/21歳)、スベン・シュプロック(ホッフェンハイム/22歳)など次世代の有望株も育つには育っているが、すぐに重要な戦力として期待できるレベルには達していない。
では、ゴメスとクローゼの後を継げるのは誰でしょうか?
 この問いに、レーブ監督はあっさりとこう答えた。
ミュラー。トーマス・ミュラーだ」】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.10.20号_No.349_記事》
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