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FRANCE 早くも覇権奪還の望みは潰えたか [THE JOURNALISTC]

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リーグ・アン  《フランソワ・ヴェルドネ記者》
リールに奪われた覇権を取り戻すべく開幕を迎えたはずが、極度の不振に喘ぎ、6節終了後には最下位に転落。現在のマルセイユにポジティブな材料は見当たらず、既に優勝の可能性はなくなったと言っても過言ではない。

開幕から6試合勝ちのない チームが優勝したケースは
6節は好調のリヨンに完敗。続くエビアン戦で初勝利を挙げたが、依然として不振から脱する気配はない。
【リーグ・アン6節に激突した二つの“オランピック”は、今シーズンここまで明暗がくっきり分かれている。
 新監督として若いレミ・ガルド(45歳)を内部昇格させるなど、ルネッサンスの真只中にあるオランピック・リヨンが、本拠地ジェルランにオランピック・ド・マルセイユを迎えたこの試合。2連勝中と波に乗るリヨン(以下OL)はマルセイユ(以下OM)を2ー0で破り、2009年10月18日以来、約2年ぶりにリーグ・アンの首位に立った。スタンディングの下方を彷徨っていた昨シーズンの同時期と比較すれば、まさに雲泥の差である。
 一方、好スタートを切ったOLとは対照的に、敗れたOMは極度の不振に喘いでいる。なにしろ6節を終えて、未だ勝ち星無し(3分け3敗)。1年前のOLに輪を掛けて酷い惨状だ。一昨シーズンのチャンピオンで、昨シーズンは2位に入った名門が最下位に沈んでいるのだから、もはやこれは“事件”と言ってもいいだろう。唯一無敗を守る首位OLとの勝ち点差は、既に11まで広がっている(編集部・注:7節では、OLがカーン相手に今シーズンの初黒星を喫し、一方のOMは、昇格チームのエビアンを下して初勝利を挙げている)
 覇権奪還を目指すOMにとって、この出だしの躓きは致命的とさえ言えるだろう。過去の統計が、それを裏付ける。現行の勝ち点制が導入されて以降、開幕から6試合未勝利だったチームが上位に食い込んだ事例は、96ー97シーズンに3位でフィニッシュしたFCナントしかないのだ。このデータに照らせば、少なくとも優勝は困難と言わざるを得ない。
 実際、既にOMのフロントは目標を下方修正し、優勝からチャンピオンズ・リーグ(以下CL)出場権へと照準を合わせ直したようだ。未だシーズンは始まったばかりであり、優勝を諦めるのは早過ぎる気がするが、それだけ状況が深刻だということだろう。
 仮に優勝はおろか、CL出場権さえも逃すような事態になれば、クラブの先行きは真っ暗になる。というのも、現在OMはこの国で開催されるEURO2016に向けて、本拠地ヴェロドロームの改修工事に着手しており、その費用として14年までに2400万ユーロ(約28億8000万円)を用意しなければならないのだ。巨額の収益をクラブにもたらすCL出場権は、そのためにも絶対不可欠なのである。
 9月13日に本選が始まったそのCLの舞台では、ギリシャのオリンピアコスを敵地で下し(1ー0)幸先のいいスタートを切ったが、しかしこの程度で、国内での失態を覆い隠せるものではない。OLに加え、リールやパリ・サンジェルマンといった他のライバルチームも軒並み順調な滑り出しを見せているだけに、尚の事OMの不甲斐なさが目立つ。
 付記すれば、OMは昨シーズンを3戦連続ドローで終えている。つまり、ブレストを下した昨シーズンの35節を最後に、リーグ・アンでは9試合も勝っていないのだ。】

破格の条件で引き留めたが その決断がここまで裏目に
破格の条件で契約を延長し、いわゆる全権を手に入れたデシャンだが、スタートで大きく躓き、今やクラブ首脳の信頼を失いつつある。
【現役時代から数え切れないほどの勝利に浴してきたディディエ・デシャン監督にとって、チームが最下位に沈む現状は耐え難い屈辱に違いない。現在OMの監督として、リーグ・アンで継続的に82試合で指揮を執っているデシャンは、ロベール・ドメルグが持つクラブレコード(87試合)を43年ぶりに塗り替えようとしている。だが、そんな名将が今、乱気流に巻き込まれ、そのど真ん中でもがき苦しんでいるのだ。09年7月の監督就任以来、デシャンがこれほど大きな危機に直面したことはない。
 実はデシャンには、この夏にOMを離れる可能性がアッタ。ASローマから届いた魅力的なオファーに、心が大きく揺らいだのだ。ローマ行きを本気で検討していたことは、OMからの契約延長の提示に対し、暫く態度を留保していたことからも明らかである。
 それでも最終的にOMに留まったのは、破格の条件を提示されたからだろう。14年まで延長したその契約の内容は、リーグ最高額の月俸25万ユーロ(約3000万円)+勝利ボーナスというもの。更に、過去2シーズンで4つのタイトルをもたらした功績を評価され、今シーズンからスポーツ面に関する全ての権限が与えられてもいる。クラブ内での発言力が増したことは、事実上のオーナーであるマルガリータ・ルイ=ドレヒュスがデシャンの要請に応じ、ジャン=クロード・ダシエ会長とゼネラルディレクターのアントワン・ヴェイラを更迭した事実からも明白だ。ダシエの後任に、監視評議会(クラブ内にある監視機関)の議長だったヴァンサン・ラブリュヌが迎えられたのも、デシャンに近しい人物だからである。
 最も、今頃クラブの上層部は、デシャンを引き留めた決断が本当に正しかったのか、懐疑的になっているだろう。覇権奪回どころか、まさかの最下位に沈んでいるのだから、それも当然だ。しかし、だからといって、おいそれとデシャンをクビに出来ない事情もある。契約を破棄すれば、900万ユーロ(約10億8000万円)もの違約金を支払わなければならないからだ。クラブの英雄を盲目的に信じたことが、ここまでは完全に裏目に出ている。

チームの空気を変えられる 強力なリーダーがいれば...
二転三転するクラブの方針に振り回されたジニャクは、稚拙なマネジメントのいわば犠牲者。すっかり意欲を失い、低調なプレーが続く。
【獲得交渉や既存戦力の処遇を巡って後手に回り、タイトルを逸する要因ともなった昨夏の反省を踏まえ、この夏のOMは迅速な動きで6人の新戦力を手に入れた。大物こそイナイが、いずれもリーグ・アンで十分の実績を持つ好タレントである。
 しかし、チームの現状を見れば、今夏の補強は失敗だったと言わざるを得ない。特に補強の目玉として、ボルドーから600万ユーロ(約7億2000万円)で獲得したアルー・ディアッラは巨大な失望を買っている。冒頭のOL戦ではあまりの不甲斐なさに、前半終了後に交代を命じられたほどだ。
 期待を裏切っているのは、この守備的MFだけではない。他の新戦力も軒並み元気がなく、ここまで誰一人として説得力のあるパフォーマンスを見せていないのだ。
 最も、今のOMは、新戦力の不出来以上に大きな問題を抱えている。数人の主力が、著しくモチベーションを低下させているのだ。中でも深刻なのが、攻撃の核であるルイス・ゴンサレスである。まったく覇気が感じられず、開幕から精彩の欠けたプレーを続けている。
 今夏のL・ゴンサレスはクラブに移籍を志願し、実際、彼のもとにはマラガなどから複数のオファーが届いていた。だがその中に、OMを納得させるだけの条件提示はなく、そのため結局、残留に落ち着いたという経緯がある。すっかり気落ちしたL・ゴンサレスは、もはやプレーする意欲を失っているようだ。
 それでもデシャンは、このアルゼンチン人司令塔を信じ、試合で使い続けている。そしてそのことが、他の選手の不満を買い、チーム内には不穏な空気が漂っている。取り分け、L・ゴンサレスの退団を前提にリクルートされたモルガン・アマルフィターノは、断続的にしか出番が与えられない現状に、爆発寸前といった様子だ。
 CFのアンドレ=ピエール・ジニャクも、見るからにフラストレーションを溜め込んでいる。5月に恥骨炎の手術を受けた25歳は、クラブからダイエットを命じられ、サマーキャンプが始まってからもミラノの療養施設にこもり、6㌔の減量に成功した。ところが、マルセイユに戻って来ると、非情にも、クラブから戦力外通告を突き付けられる。しかも、移籍期限最終日にフルアムと契約寸前までいきながら、今度は一転、クラブからマルセイユに戻るよう命じられたのだから、タマラナイ。
( ー 中 略 ー )
 こんな仕打ちを受ければ、誰だって嫌気が差すだろう。これで、クラブや監督を信頼しろという方が難しい。
 今やOMのアイドルとなったアンドレ・アユーも、気持ちにわだかまりを抱えているようだ。・・・(略)・・・。こうした不実な行為に、21歳の若者はクラブへの信用を失ってしまったのだ。
 何よりも切実なのは、チームに活を入れ、淀んだ空気を変えられる強力なリーダーの不在だろう。
( ー 中 略 ー )
 L・ゴンサレスや、キャプテンでGKのステーブ・マンダンダは性格が大人し過ぎるし、CBのスレイマン・ディアワラはリーダーの素質があるものの、肝心のパフォーマンスにムラがあり過ぎる。また、フランス代表でキャプテンを務めるA・ディアッラは、未だチームに加わったばかりで、他の選手に影響力を行使するまでには至っていない。
 下馬評では、パリ・サンジェルマンと並ぶ優勝候補に挙げられていたOMだが、リーグ開幕から1カ月半にして、早くもタイトルレースから脱落した感がある。いや、現在のチーム状態を考えれば、CL出場権の確保さえ困難と言わざるを得ない。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.10.20号_No.349_記事》
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