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FRANCE 現実路線に舵を切った悩めるOL [THE JOURNALISTC]

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リーグ・アン  《フランソワ・ヴェルドネ記者》
3シーズン連続で無冠に終わったOL(リヨン)が、沈滞ムードを打破すべく従来の方針を改め、現実路線を歩み始めた。暫くは苦しい時間が続くだろうが、かつての栄華を取り戻すには、それが最善策かも知れない。

3部から加入の若きCBが 本選出場権と巨額の収益を
CLプレーオフで救世主となったのが無名の新戦力コネ。本選出場と巨額の報奨金を保証する特大の一撃を沈めた。
【チャンピオンズ・リーグ(以下CL)の本選出場を賭けたプレーオフで、リヨンはロシアのルビン・カザンと対戦した。その第2レグで、ある若いCBがドデカイ仕事をやってのけ、一躍脚光を浴びた。彼の名は、バカリ・コネ。8月中旬に、ナショナル(3部)のギャンガンからやって来たブルキナファソ出身の23歳だ。この時点で、リヨンが今夏に獲得した唯一の新戦力だった若者は、クラブが自分に投資した200万ユーロ(約2億4000万円)をタッタ1試合で完済したばかりか、その額を遥かに上回る収益をリヨンに保証したのである。
 ホームでの第1レグを3ー1でモノにし、アドバンテージを持ってロシアに乗り込んだりヨンは、この第2レグの77分に先制され、もう1点奪われればアウェーゴールの差で敗退へという状況に直面していた。そんな冷や冷やする展開の中、無名の若きCBが87分にヘッドを叩き込み、沈滞ムードを打ち破ったのだ。この値千金のゴールにより、リヨンは本選出場を決めるとともに、UEFAからおよそ2000万ユーロ(約24億円)の出場手当てを受け取ることとなった。
 リヨンがCL本選に出場するのは、これで12シーズン連続。この記録を上回るのは、同じく16シーズン連続出場を決めているマンチェスター・ユナイテッド、同15シーズンのレアル・マドリー、同14シーズンのアーセナルと、たった3チームしかない。取り沙汰される機会はそれほど多くないが、胸を張れる記録だろう。
 本選出場の切符を掴んだことで、リヨンは面目と威厳を保つことが出来た。しかし、それ以上に大きいのが、巨額の収入を確保できたことだろう。現在、クラブの財政は逼迫した状態にあり、喉から手が出るほどカネを必要としているからだ。
 リヨンはCL出場の報奨金として、2003年から10年までの8年間に、UEFAから合わせて1億6800万ユーロ(約201億6000万円)を受け取っている。1年平均に均すと、2100万ユーロ(約25億2000万円)である。この巨額の収入が途絶えれば、それこそクラブの経営が成り立たなくなる恐れさえアッタ。ジャン=ミシェル・オラス会長は、ホッと胸を撫で下ろしていることだろう。

太陽に近付き過ぎたために 自らの翼を焼失して...
オラスは厳しい現実を前にこれまでの方針を改め、長期的展望に立った堅実路線へと舵を切った。この決断が実を結ぶ日は訪れるのか。
【最も、オラスは覚悟していたはずだ。この夏に、かつてないほど厳しい現実に直面するであろうことを。財政面を初め、憂慮すべき問題が山積していたからだ。
 まず真っ先にカタをつける必要がアッタのが、クロード・ピュエル前監督の契約問題だった。08年夏に交わしたピュエルとの契約を、1年残したまま破棄する決断を下したはいいが、これにピュエルが猛反発。双方とも主張を譲らなかったため示談は成立せず、前監督は裁判所に不当解雇を訴え、500万ユーロ(約6億円)の賠償請求を行なったのだった。
 この破格の請求額を聞いたオラスは、その場で飛び上がらんばかりに激昂したという。要求ばかりを口にし、一向に結果が伴わないピュエルのことを、オラスはずいぶんと前から腹に据えかねていた。そこに来て、この破格の賠償請求だ。怒り心頭に発したもの無理はない。
 だが、オラスにとって何よりも耐え難かったのは、あれだけ栄華を誇っていた自分のクラブが、ライバル達に次々と追い抜かれていくという現実ではなかったか。つい数年前までリヨンは、国内には目もくれず、ヨーロッパ中を旅しては、自分よりも裕福で強大なチームを見つけ出し、挑戦状を叩き付けていたモノだ。しかし、そんな時代は今や昔。現在は国内での地位さえ揺らぎ始め、実際、オイルマネーをバックに生まれ変わったパリ・サンジェルマン、マルセイユ、更にはリールにまで先を行かれている有り様だ。
 07ー08シーズン以来、タイトルから見放されているリヨンは、もはや“それなりのクラブ”に成り下がった感がある。国内のあらゆる敵を呑み込み、リーグ・アンを牛耳っていたアノ食人鬼の姿は、もうどこにもない。バルセロナやR・マドリー、マンチェスター・U、ACミランといったメガクラブにも負けない輝きを得ようと、余りにも太陽に近付き過ぎたため、リヨンは自分の翼を焼失してしまったのだ。
 既述した財政難を招いたのも、身の丈を超える投資を繰り返したツケである。3年に渡るピュエル政権時代の無謀な補強政策により、それまで健全経営を続けていたクラブの財政が赤字に転じたのだ。しかもソノ間、手に入れたタイトルはゼロ。オラスのやり切れない思いは容易に察しがつく。
 財政立て直しのため、この夏には主力選手を他のクラブに売却する必要性にも迫られた。
( ー 中 略 ー )
 もはやリヨンは、かつてのように移籍マーケットを賑わせるようなクラブではない。今やフランス市場に於いてでさえ、影が薄くなっている。8月6日のリーグ・アン開幕戦はニース相手に1ー0の勝利を収めたが、シーズンが幕を開けた時点で新加入選手がひとりもイナイなどということは、オラスがクラブの実権を握った87年以来、初めてのことである。
 ようやく8月下旬になって、コネに続きセビージャからサイドバックのムアマドゥ・ダボを獲得し、更に移籍期限最終日にはフランスUー20代表のキャプテン、グエイダ・フォファナをリーグ・ドゥ(2部)のル・アーブルから手に入れた。最も、この3人の獲得に要した金額は合計で480万ユーロ(約5億7600万円)。肩で風を切って歩き、他者を上から見下ろしていた元王者にとっては、貧弱極まりないリクルーティングである。
 これは、DNCG(訳者・注:国内のプロクラブの財政面、及び法的運営を監視・管理する機関)の指導により、出来るだけ支出を抑える必要がアルからだ。同時にまた、UEFAが推進するファイナンシャル・フェアプレーの基準を満たすための備えでもある。オラスは無茶な投資を止め、現実路線の経営戦略へと切り替えたのだ。この点で、オラスを非難することは出来ないだろう。
 再び上昇に転じるために、オラスは14〜15年に完成予定の新スタジアム、『スタッド・デ・リュミエール』がもたらすであろう収益を当てにしている。もう暫くは厳しい時期が続くだろうが、その目論見が現実となれば、明るい展望が開けてくるはずだ。思えば、バイエルン・ミュンヘンやアーセナルもこうした苦しい時期を経験し、その後、再浮上の道を辿っている。

オラスは自身の秘蔵っ子に バルサの名将を重ね合わせ
ピュエルの後任に指名されたのは、オラスの秘蔵っ子であるガルド。監督経験こそないが、下部組織出身の若手を熟知するのは強みだ。
【オラスの変化は、今夏の監督人事にも表われている。これまでのように、実績のアル、あるいは名の知れた指導者を外部から引っ張ってくるのではなく、ピュエルの後任として、45歳と若いレミ・ガルドを内部昇格させたのだ。これまでトップチームはおろか、監督経験自体がない男を、である。
 この元フランス代表(6キャップ)は、リヨンで育成され、リヨンでプロデビューし、リヨンで9年間プレーしたかつてのキャプテンだ。・・・(略)・・・。
 オラスにとってガルドは、言うなれば息子のような存在。最終的にピュエルの招聘で落ち着いたものの、08年夏にはアラン・ペランの後任として、当時42歳だったこの秘蔵っ子を新監督に据えようと本気で考えていたほどだ。ガルドの抜擢が、単なる思いつきではないことだけは確かである。
 オラスからトップチームを託されたガルドは、早速チーム改革に着手。まず手始めとして、グループ生活に独自の手法を導入した。選手達に複数のリーダーを選抜させ、そのグループが選手全員の代弁者として、自分と密にコミュニケーションを取るよう求めたのだ。結果、・・・(略)・・・6人がソノ任についた。彼ら“代表団”は定期的に監督と会談の機会を持ち、チームの内情や今後の方向性などについて意見交換するのだという。
 前監督のピュエルが、何から何まで自分で決定しようとするマネジャー・タイプだったのに対し、このようにガルドは、よりコレクティブなビジョンを持っている。現場のトップとして振る舞いながらも、多くの人の意見に耳を傾け、それを柔軟に取り入れようとする度量の広さがある。
 監督としての経験の無さは、確かに心許ない。しかし、ガルドにはガルドなりの強みがある。その最たるモノが、クラブの下部組織から巣立った選手、あるいは現在そこに在籍する若手を熟知していることだ。現に彼は、若手を積極的に起用する方針を打ち出しており、行く行くは生え抜き中心にチームを編成する構想を持っているという。オラスがガルドを抜擢したのも、自らが理想とする生え抜き重視の政策を、この秘蔵っ子が実践してくれるという確信がアッタからなのだ。
 オラスがガルドに重ね合わせているのは、バルセロナのジョセップ・グアルディオラだろう。下部組織から引き上げた若者を着実に戦力として仕立て上げ、チームを強化するというサイクルこそ、オラスが真に求めているモノだ。そういえば、ガルドとグアルディオラはタイプこそ異なるが、ともに現役時代はセントラルMFだった。
 現にリヨンには、将来性豊かな若手選手がひしめいている。今夏にコロンビアで開催されたUー20ワールドカップで、フランスは4位という好成績を収めたが、この“レ・ブルエ”(筆者・注:A代表をレ・ブルーと呼ぶのにちなみ、Uー20代表は「小さいブルー」という意味のこの愛称で呼ばれる)のめんばーには、アレクサンドル・ラカゼット、ティモテー・コロジエチャク、クレマン・グルニエ、ヤニス・タフェール、セバスティアン・フォール、トマ・フォンテーヌ、エンゾ・レアルと、リヨンの選手が7人も含まれていた。このうちレアルは今夏に武者修行に出され多が、代わりに既述のフォファナが加入と、まさにリヨンは有望株の宝庫と化しているのだ。
 Uー20ワールドカップで、特に活躍が目覚ましかったのが、FWのラカゼット。5ゴールを挙げ、大会得点王に輝いた。抜群のスピードを持つ快足アタッカーは、既にリヨンのトップチームでも貴重な戦力で、昨シーズンのリーグ・アン、そしてCLでもゴールを決めている。
 移籍市場での衰退の裏には、自前で育てた若手をチームの中核に据えるという長期的戦略が潜んでもおり、近い将来、このUー20ワールドカップ組の中からビッグスターが生まれるかも知れない。実際に若い選手というのは、才能とチャンスに恵まれれば、信じ難いスピードで成長を遂げることがある。かつてのカリム・ベンゼマがそうだったように...。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.10.6号_No.348_記事》
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