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GERMANY 早くも正念場を迎えたハンブルク [THE JOURNALISTC]

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ブンデスリーガ  《ルドガー・シュルツェ記者》
財政難で身動きが取れず、競争力が著しく低下。4節を終えて最下位と、ハンブルクが苦しんでいる。過去に一度も2部に降格したことのない北の巨人は、この厳しい状況をいかに乗り切るのか。早くも正念場を迎えている。

最後の6分で2失点を喫し 最下位のケルンに逆転負け
ケルン相手に逆転負けを喫し、ガックリと肩を落とすヤロリム。最下位に沈んだ名門ハンブルクは、この危機をどう乗り切るのか。
【これほど惨めな敗戦がアルだろうか。ブンデスリーガ第4節、ハンブルガーSVが喫した逆転負けは、伝統ある北部の巨人が現在、かつてないほど厳しい状況に直面している事実を、改めて浮き彫りにした。
 11分にムラデン・ペトリッチのPKで先制したものの、10分後に同点に追いつかれ、後半開始直後に逆転される展開。それでもしぶとく粘り、59分と62分に挙げた立て続けのゴールで再び3ー2のリードを奪う。その時点で、誰もが確信したはずだ。
「相手が相手だし、このスコアのまま終わるに違いない」
 と。だが、不調の真只中にあるハンブルクに1点を守り切る力はなかった。信じ難いことだが、最後の6分間で一気に2失点を喫し、再度、試合をひっくり返されてしまったのである。
 ホームでの屈辱的な敗戦に、怒りを爆発させたのはサポーターだ。それはそうだろう。相手は自分達よりずっと格下だと思っていた最下位の1FCケルンだったのだ。ただ、ファンはひとつ忘れている。自分達が、上から物を言える立場にないことを。3節を終えた時点でハンブルクは、ケルンと大差ない17位に沈んでいたのだから。いわば「最下位対ブービー」の対決は、こうしてブービーの敗北に終わった。そして順位は入れ替わり、ハンブルクが最下位に転落したのである。
 降格ゾーンで悪戦苦闘するハンブルクだが、彼らは“貴重な記録ホルダー”として知られたクラブだ。1963ー64シーズンにスタートしたブンデスリーガの長い歴史の中で、一度も2部に落ちたことのない唯一のチームなのである。バイエルン・ミュンヘンも降格経験は一度も無いが、この南部の巨人がブンデスリーガに参戦したのは65ー66シーズンから。すなわち創設時から名を連ねるメンバーでは、ハンブルクが唯一なのだ。
 ドイツ・サッカー史におけるハンブルクの栄光が、色褪せることは無い。1923年にクラブ初のドイツ選手権王者となって以来、いわゆるトップリーグで果たした優勝の回数は六度。83年にはチャンピオンズ・リーグの前身であるチャンピオンズ・カップの頂点に立ち、またDFBカップを三度、リーグカップを二度制するなど、その歴史は栄光に彩られている。
 記録と共に、記憶にも深く残るチームだった。
( ー 以降 略 ー )】

いわば見習いに近い船長が 傾きかけた船を操縦する
●新SDのアルネセンに突き付けられたのは厳しい現実だ。深刻な財政難の中で今後、いかに強化を進めていくのか。
●昨シーズン途中に就任してからの成績は、1勝6分け5敗と惨憺たるモノだ。数カ月前までコーチだったオエニンクに、ハンブルクの指揮官は荷が重過ぎる。
だが、そんな栄光の歴史は、もはや完全に過去のモノだ。昨シーズンのハンブルクは、欧州カップ戦の舞台にすら立てず、ブンデスリーガにおいても凡庸な成績(8位)に終わり、期待を大きく裏切った。
 高額の年俸を得るビッグネーム達は軒並み不振に陥り、また利他的に振る舞える選手はひとりもいない。これでは、優勝争いに絡めるはずが無いだろう。そして今夏、崩壊寸前のチームに嫌気が差した選手達は、大挙して退団を決意。ルート・ファン・ニステルローイ、ゼ・ロベルト、ヨリス・マタイセン、ジョナタン・ピトロワパ、ピオトル・トロホウスキ、フランク・ロストといった、いわばチームの顔役が一気に抜けたのである。
 低迷を招いた原因は、一にも二にも会長とフロント(強化部門)にある。彼らは「クラブを運営する上で絶対にしてはならない行為を、全て実行した」と言っていいほど愚かな政策を繰り返し、チームから輝きを奪ったのだ。
 選手の真価を見抜けず、移籍マーケットに無駄なマネーを次々と投じていったのが強化部門だ。一方、周囲をイエスマンで固めたベルント・ホフマン会長は、“裸の王様”となって多くの決断を誤った。彼らをコントロールするはずの理事会も、有効な解決策を最後まで見出せず、結果、ハンブルクに訪れたのは未曾有の大改革だった。今春、『クラブ首脳陣の総辞職』が決定。これにより理事会、会長、マーケティング部長、監督、GMの顔触れは一新され、クラブは文字通り生まれ変わったのである。
 新たな人事の目玉は、スポーツディレクター(SD)のフランク・アルネセン。デンマーク出身の元代表選手で、物静かな性格ながら着々とミッションをこなしていく仕事人だ。過去にPSVアイントホーフェン、トッテナム・ホットスパー、チェルシーで同様の仕事に従事したアルネセンは、PSV時代には怪物ロナウドやアリエン・ロッベン、ファン・ニステルローイを発掘するなど、目利きの良さには定評がある。ちなみにチェルシー時代には、リザーブチームのコーチも務めたが、際立った成績は残せていない。どうやら、指導者には不向きらしい。
( ー 中 略 ー )
 ・・・(略)・・・、結局、契約は成立しなかった。これを受けて白羽の矢が立ったのが、チェルシーのSD職を辞したばかりのアルネセンだったというわけだ。ハンブルクが提示した年俸は、170万ユーロ)約2億400万円)。苦しい財政事情を考えれば、破格である。
 クラブ職員の中で最高額の報酬を受け取ることになったアルネセン。彼に突き付けられたのは、しかし厳しい現実だった。理事会が『倹約路線』を打ち出したのである。
・・・(略)・・・。
 アルネセンのモチベーションは、一気に低下しただろう。
 強引に導入された倹約政策は、監督人事にも小さくない影響を及ぼした。2011年3月12日、ハンブルクはバイエルンに0ー6で大敗し、それに伴い当時の監督だったアルミン・フェーが引責辞任する。ところが、新監督を招聘する資金を捻出できなかったハンブルクは、アシスタントだったミヒャエル・オエニンクを昇格させる以外に、手段が無かったのだ。
 ドイツ語とスポーツ学を大学で専攻した46歳のオエニンクは、かつて教師を目指していたが、やがてサッカー指導者の道を歩み始め、VfLヴォルフスブルク、ボルシア・メンヘングラッドバッハ、1FCニュルンベルクといった中堅クラブを渡り歩くコーチになっていたという変わり種だ。
 監督としての評価は、決して高くは無い。むしろ、「向いてイナイ」という見方が大半だ。リーダーシップとビジョンに欠け、総合的なマネジメント能力に疑問を持たれている。要するに、器では無いのだ。
 そんな人物が、果たしてブンデスリーガ1部のクラブを率いることができるのか。指名した理事会が愚かなのか、指名を受け入れた当人が悪いのか、その判断は兎も角、いわば見習いに近い船長が、傾きかけている船を操縦しているわけである。
 案の定と言うべきか、駆け出しの新米には荷が重かった。オエニンクが指揮を執ってからハンブルクが消化したブンデスリーガの試合は、今シーズンも含めると、ここまで12試合。結果は1勝6分け5敗と惨憺たるモノだ。初陣のケルン戦(3月19日)に6ー2で勝利したのが、唯一の白星である。
 今シーズンに限れば、1分け3敗だ。決して恵まれているとは言えないタレントをいかに活用し、チームに秩序を植え付け、戦術を浸透させて競争力を高められるか。オエニンクに課せられた任務は、難易度が低く無い。とはいえ開幕4試合で3敗は、言い訳の許されない成績だ。】

今夏の補強は12億円前後 この程度の“小銭”では...
【ファンの失笑を買ったのは、8月31日に期限を迎えた今夏の移籍市場での成果についてもだ。クラブが用意した補強費は、1000万ユーロ(約12億円)前後だったと言われている。この程度の“小銭”で獲得できる優れたタレントなど、そうイナイだろう。
 そこでアルネセンは、古巣のチェルシーに連絡を入れ、リザーブ選手やレンタルに出している若手有望株などを、安く譲ってもらえるよう交渉した。・・・(略)・・・の5人が、ドイツ北部の港町にやって来たのである。
「これではまるで、チェルシーのリザーブチームだ」
「アルネセンはチェルシーの余り物でチームを作るようだ」
 厳しい批判に対して、アルネセンはこう反論する。
「クラブにはカネが無い。その中で、どう補強するか。私がチェルシーと良好な関係をキープしていたからこそ、“お手頃価格”で選手を獲得できたのだ」
 ただ、いずれも未知数のタレントであり、戦力アップに繋がるかは大きな疑問だ。0ー5の大敗を喫したバイエルン戦(3節)のハンブルクが、現在のリアルな姿だろう。仮に決定機を全てモノにされていたら、失点数は間違いなく二桁に達していたはずだ。
 選手以上にショックを隠し切れなかったのは、オエニンク監督だった。
「基本的なプレーが出来ず、簡単な約束事も守れていなかった。それが腹立たしい」
 選手への不満をそう口にしたが、オエニンクの戦術がチームに浸透していないのは明らかで、敗戦の責任は指揮官にも当然ある。
 不可解なのは、オエニンクの戦い方だ。ある試合では4ー3ー3、別の日には4ー4ー2、その翌節には4ー1ー4ー1を採用するなど、システムに一貫性がマルでない。また攻撃サッカーを目指しているようだが、攻守のバランスを見出せず、4試合で14失点とディフェンスは早くも崩壊寸前だ。
 個々のパフォーマンスも、褒められたモノではない。合格点に届くのは、唯一、チェコ代表のダビド・ヤロリムぐらいのモノである。
( ー 中 略 ー )
 財政難ならば育成に力を入れれば良いと、そんな意見もアルだろう。だが、それには長い時間と根気が必要だ。ドルトムントは一夜にして強豪チームになったわけでは決してない。
 この厳しい状況を、いかにして乗り切るか。名門ハンブルクは、今重要な局面を迎えている。
 最も、財政難で身動きの取れない現状は、オエニンク監督にとっては好都合かも知れない。余程の失態を演じない限り、解任される心配はないだろう。何故か。新たな監督を雇えるだけの資金が、今のハンブルクにはないからだ。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.10.6号_No.348_記事》
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