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BRASIL 輝きを取り戻したロナウジーニョ [THE JOURNALISTC]

[サッカー][目] [耳]  [手(パー)]
カンピオナット  《ロドリゴ・ブエノ記者》
ヨーロッパでの挑戦を終え、母国に帰国したロナウジーニョが輝きを取り戻している。フラメンゴでまさに奮迅の活躍を披露し、ブラジル代表にも約10カ月ぶりの復帰。あの屈託のない笑顔が、再びピッチではじけている___。

「もう終わった選手」という 見方を良い意味で裏切った
【ノベーラ(甘ったるいメロドラマ)と揶揄された国内4クラブとの緩慢にして冗長な交渉の末、今年1月10日にロナウジーニョがフラメンゴ入団を発表した時、フラメンゴ寄りのメディアとフラメンギスタ(フラメンゴ・ファン)を除く殆どの人間が、この希代のクラッキのコンディションについて懐疑的だった。
 本人は「2014年ワールドカップの出場を目指す」と前歯を剥き出しにして笑っていたが、「もう終わった選手」、「セレソン復帰は困難」という見方が少なくなかった。自他共に認めるブラジルサッカー界のご意見番であるマリオ・ザガロ(元ブラジル代表監督)も、「近年のプレーを見る限り、ロナウジーニョのセレソン復帰はないだろう」とバッサリ切り捨てていた。
 また、ロナウジーニョが自らの出身クラブであるグレミオを二度までも裏切った事実が、人間としての印象を悪くしてもいた(編集部・注:一度目は01年。グレミオからの契約延長オファーに煮え切らない態度を取りながら、内密にパリ・サンジェルマンと仮契約を結び、結果的に不当に低い移籍金で退団した。二度目は今年1月。本人は「愛するグレミオに行きたい」と明言しながら、より年俸の高いフラメンゴに入団した)
 そうした感情論は別にしても、これまでヨーロッパで過ごした約10年間、各地でナイトライフを謳歌して来た男は、「シダージ・マラビリョーザ(魅惑の街)」と呼ばれるリオデジャネイロの純白のビーチ、心浮き立つサンバ、甘美なアルコール、官能的な美女などに耽溺(たんでき)し、活力を吸い取られてサッカーどころではなくなるだろう。そんな声が大半を占めており、この点は代理人を務める兄アシスも危惧していた。
 かくいう私も、遅かれ早かれ、フラメンゴがロナウジーニョの選手キャリアの墓場となると予想していた。
 しかし、このコラムを書いている9月上旬の時点で、ロナウジーニョはこれらのネガティブな予想を良い意味で裏切り続けている。ACミラン時代晩年の無気力で自信なさげなロナウジーニョとは、まったくの別人。嬉々として、自信たっぷりにプレーしているのだ。

適度に気晴らしをしながら 生活の中心にはサッカーが
●最優秀FWに選出される活躍を披露し、フラメンゴをリオ州選手権優勝に導く。進行中の全国選手権でも、得点ランクの2位につける。
●美女と一緒に大好きなサンバを踊り、カーニバルを堪能。ただ、これまでのところ、サッカーに悪影響が及ぶほど遊び呆けてはいない。
【ロナウジーニョがフラメンゴでデビューしたのは2月1日、リオ州選手権第5節のノーバ・イグアス戦。スタンドには、このスーパースターを一目見ようと4万2000人の観衆が詰めかけた。懸念されたフィジカルコンディションもまずまずで、左腕にキャプテンマークを巻き、背番号10を付けて前半はトップ下、後半は2列目に左サイドでプレーしたデントゥッソ(巨大な歯の意味で、ロナウジーニョの愛称)に、ファンは大歓声を送った。
 次節のボアビスタ戦で直接FKを沈めてフラメンゴでの初得点を記録すると、以後、徐々に調子を上げていった。
 今やフラメンゴの選手は、ボールを持つと誰もがまず、ロナウジーニョを探す。殆ど全ての攻撃が、デントゥッソを経由するのだ。ボールを受けたロナウジーニョは、中盤では少ないタッチでシンプルに捌き、崩しとフィニッシュの局面では得意のまたぎフェイントを連発して縦への突破を図れば、更にスルーパスを駆使して決定機を作り出す。自ら積極的にシュートを放つシーンも、少なくない。
 また、左右のCK、間接・直接に関わらず敵陣で得たFKの殆どを任されている。つまり、フラメンゴの攻撃を取り仕切る特別な存在となっているのだ。中心選手としての自覚からか、守備面でもそれなりに貢献する。
 リオ州選手権では、13試合に出場して4得点・1アシスト。フラメンゴは無敗のまま戴冠し、キャプテンとして移籍後初の優勝カップを掲げた。
( ー 中 略 ー )
 その後のフラメンゴは、好調ロナウジーニョを中心に連勝街道を突っ走る。圧巻だったのが、7月27日のサントス戦(12節)。ネイマールとの新旧ファンタジスタ対決として注目を集めたこの試合では、25分の時点でサントスが3ー0の大量リードを奪う。しかし、フラメンゴは28分にロナウジーニョが右からのクロスを押し込むと、更にチアゴ・ネーベスとデイビッジが1点ずつ挙げて前半だけで同点に。・・・(略)・・・。
( ー 中 略 ー )
 8月31日のアバイ戦(20節)では、左CKを鋭いカーブを掛けて直接ニアサイドの上にねじ込むゴール・オリンピコ(訳者・注:「オリンピック・ゴール」の意味。1924年にアルゼンチン代表が、パリ五輪で優勝した直後のウルグアイ代表を招いて親善試合を戦った際、アルゼンチンの選手がCKを直接決めたことから、南米ではそう呼ばれる)。技術と創造性の素晴らしさを改めてアピールした。
 9月3日の21節終了現在で、ロナウジーニョは18試合出場で12得点・7アシストとまさに獅子奮迅の成績。得点ランクは現在2位で、1試合平均で0.66。全盛期のバルセロナ時代(03〜08年)ですら、リーガ・エスパニョーラでは145試合で70得点(1試合平均で0.48)。それを遥かに凌ぐキャリア最高の数字である。
 総合的なプレー内容では、バルセロナ時代のロナウジーニョに戻ったとまでは言わないが、全盛期の80㌫程度の水準には達しているだろう。
 好調の最大の要因は、入団からデビューする3週間の間に真面目に取り組んだフィジカルトレーニング。身体のキレは上々だ。キャプテンと攻撃の中心という重責を託されて生まれた、精神的な張りも見逃せない。
 結果を出してチームメイト、ファンから信頼を勝ち得て、喪失気味だった自信も回復しているようだ。ロナウジーニョは、チームの主役に君臨して始めて能力を発揮するタイプ。脇役や途中出場では、コンディションもモチベーションも保てない。その点で、現在の精神的コンディションは万全だ。
 とはいえ、過去にあれだけ夜遊びを繰り返して来た男が、突然、神父や修道士のように品行方正な生活を送れるわけがない。
 3月上旬のカーニバル期間中には、エスコーラ・デ・サンバ(サンバチーム)のパレードで連日連夜踊り明かしたり、6月には歌手で女優の混血美女との交際が報じられたりと。相変わらず自由奔放だ。
 ただ、カーニバル直後の練習にはきちんと参加して次の試合にも先発フル出場しているし、インテル・ミラノ時代のアドリアーノ(現コリンチャンス)のようにアルコール中毒になったり、練習をサボったりもしていない。
 この点ではプロフェッショナルであり、適度に気晴らしをしながら、あくまでもサッカー中心の生活を送っているようだ。少なくともこれまでのところは、だが。

セレソンに定着するには 人間的な成熟が欠かせない
10番を背負ったガーナ選では、巧みなパスで攻撃陣をリード。リーダーシップを発揮できれば、セレソン定着も。
フラメンゴでの活躍が認められ、誰もが「不可能だ」と語っていたセレソン復帰も果たしている。9月5日にガーナ代表との親善試合を戦うメンバーの一員に選出されたのだ。昨年11月17日のアルゼンチン戦(先発したが精彩を欠き、後半途中でベンチに下げられた)以来、約10カ月ぶりの招集である。
 マノ・メネゼス監督は、招集の理由をこう語った。
「クラブでコンスタントに出場し、良いパフォーマンスを見せている点を評価した。チームリーダーのひとりとして、若手を引っ張て貰いたい」
 ロナウジーニョ本人は、
「セレソンに復帰できて、とても興奮している。自分がいることで、若い選手へのメディアや国民からのプレッシャーを少しでも軽減してやりたい」
 と指揮官の意を酌む“大人の発言”をしていた。
 ロナウジーニョの復帰には、現在のチーム事情にも大きく関係している。今夏のコパ・アメリカではネイマール、ガンソ、アレッシャンドレ・パット、ルーカスら期待の若手攻撃陣が実力を十分に発揮できず、チームを機能させるには、経験豊富なベテランの存在が不可欠だと痛感させられた。
 ただ、カカは未だ本調子ではない。また、メネゼス政権下でレギュラーを務めるロビーニョも、故障で今回の招集が見送られた。そんな中、フラメンゴで好調を維持するロナウジーニョにお呼びが掛かったというわけだ。
 英国のロンドンで開催されたガーナ戦でロナウジーニョは、4ー2ー3ー1の2列目左サイドで先発した。
( ー 中 略 ー )
 ロナウジーニョのプレーには、メネゼス監督も好印象を抱いたようだ。
「彼に求めるのは決定的な場面を作ること。期待通りの仕事をしてくれた」
 当の本人も、笑顔を弾ませた。
「初めての選手とも違和感なくプレーできた。楽しかったよ。まずは来年のロンドン・オリンピックにオーバーエージ枠での参加を目指し、それから2014年ワールドカップを狙いたい」
 ガーナ戦の直後には、メネゼス監督が9月14日と28日に行なわれるアルゼンチン代表との親善試合のメンバーを発表。国際Aマッチデーではないため、国内組のみの招集となるが、ロナウジーニョはこれにも食い込んだ。ガーナ戦の出来を考えれば、仮に欧州組が招集できても選出されていたに違いない。
 ブラジル国民にとって、また世界中のサッカーファンにとっても、笑顔を取り戻したロナウジーニョの自由奔放なプレーを見られるのは、大きな喜びだろう。それはセレソンの若手にとっても同じ。今をときめくネイマールも、
「ロナウジーニョは僕のアイドル。一緒にプレーできて本当に幸せだよ」
 と興奮と喜びを隠さない。
( ー 中 略 ー )
 仮にベンチに置く場合、それがチームにネガティブな影響を与えないとも言い切れない。メネゼス監督の判断次第だが、現時点では難しいだろう。
 今後、ロナウジーニョがセレソンで居場所を確保し続けるには、最低でも現在のプレーレベルを保ち、更にベテランとして、チームリーダーとして若手に好影響を与えるタスクが求められる。CBのルッシオがプレーだけでなく、強烈なリーダーシップを発揮して守備陣を統率し、チームに不可欠な存在となっているように。
 ロナウジーニョがロンドン五輪、更には自国開催の14年ワールドカップのピッチに立つには、プレーレベルは勿論、人間的な成熟も重要なポイントとなるだろう。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.10.6号_No.348_記事》
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