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ブラジル・ワールドカップ_出場32か国の「通信簿」_オランダ [ダイジェスト特別版]

8 :グループB
オランダ  総合評価:A+(絶賛できる=未来への収穫_大) 最終結果 → 3位(6勝0分け1敗/15得点・4失点)
評者:ハンス・ファン・ブロイケレン(元オランダ代表/現PSV理事)

【魅力的なサッカーではないが 最高のパフォーマンスだった】

 PK戦で決勝進出の道を絶たれたのが残念でならない。しかも、周到に準備してPK戦を迎えたコスタリカとの準々決勝とは打って変わって、アルゼンチン戦ではもともと指名されていた5人の中に拒否した選手が居たため、開始直前に順番をきめる有り様だった。キック拒否など、プロがすることではない。
 コスタリカ戦では、(延長終了間際にGKを)シレッセンからクルルに代えて臨んだだけでなく、ファン・ペルシ、ロッベン、スナイデル、カイトと、当初のオーダー通りの順番で蹴った。入念に準備されたプラン通りのPK戦だったわけだ。そしてこれが奏功。非常に良い流れで成功裡に終えられた。指揮官が何週間も掛けて考えた「PK戦で勝つためにはこうすべきだ」という、模範的なシナリオが実践されたように思う。ところが、アルゼンチン戦ではメンタル面を含め、全く準備できていなかった。本当に驚いたよ。
 ファン・ハールの頭の中には「偶然」という概念など存在しないはずだ。しかし、ワールドカップの決勝という至高の舞台が懸かったPK戦で、オールドファッションな考えが浮上したのだろう。敗戦後、彼はPK戦を「くじ引き」と表現した。意外だったよ。そんな表現は、チームの全てを管理下に置く人間には相応しくないからね。
 最初のキッカーのフラールには、決められるという確信がなかったのだろう。コスタリカ戦の5番手までに彼の名前がなかったことからも、失敗するだろうと予想できたよ。
 一方で、ゴールマウスを守ったシレッセンには同情している。クルルほどPKが得意ではない彼には、難しいタスクになったわけだからね。ただ、彼のためにも言っておこう。リカバリーのチャンスはある。04年までPK下手とこき下ろされてきたファン・デルサルは、33歳を迎えて以降、オランダ代表でも、マンチェスター・ユナイテッドでもPK戦でヒーローになっている。
 25歳とシレッセンは未だ若い。絶望する必要は全く無いだろう。守護神としての存在感、安定感、冷静さといった、現代サッカーで求められるゴールキーパーの資質を全て備えたオールラウンダーだ。正真正銘のオランダ代表の正守護神と言っていい。まあ、PKに関しては、クルルや3番手のフォルムの方が上手だがね。
 今大会、確かに決勝進出は叶わなかった。しかしそれでも、オランダ代表の戦いを十分に堪能させてもらった。スコアレスに終わったアルゼンチン戦にしても、相手のスター選手に得点機を与えないように力を出し切った。実践したのは、典型的なイタリア流の守備的なサッカーで、数少ないゴールチャンスの訪れを期待する展開にはなったが、メッシを上回るニ度のチャンスをロッベンは迎えている。
 準々決勝と準決勝が無得点だったから、決勝進出に相応しくなかったという考えもある。しかしそれはナンセンスだ。例えばPSVは、88年のチャンピオンズ・カップで優勝した際、その道程の4試合がドローだった。過程はどうであれ、大会では最終成績がモノを言う。
 なにより、オランダは最高のパフォーマンスを見せてくれた。各々が見せたファイティングスピリットと献身的なプレーは、観る者の心を熱くした。かなでも、ロッベンは常に対戦相手に脅威を与えていたし、ファン・ペルシは途中から期待通りの活躍が出来なくなったとはいえ、スペイン戦で美しいダイビングヘッドを決めて、その後の4週間を楽しむ切っ掛けを作ってくれた。他にもデフライ、デパイ、ブリントと、エールディビジのトップ選手が国際舞台で活躍できるまでに成長を遂げている。選手とスタッフには賞賛を送りたい。もちろん、天才的な采配と用兵術、そして抜群のリーダーシップを見せてくれた指揮官のファン・ハールにもだ。
 今回のワールドカップは、オランダのサッカー観を考える良い機会になった。サッカーは魅力的なプレーが主体でなければならないという誤った考えを、国中に認めさせる大会になったと思いたいよ。トーナメントはいくら美しいプレーをしても勝たなければ意味がない。大会中、ボールポゼッションは最低でも60㌫が好ましいという意見も聞いたが、呆れてしまったよ。そんなのトーナメント戦略を理解しない者の言葉でしかないからね。




《ワールドサッカーダイジェスト:2014.8.7号_No.416_記事》
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