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SPAIN 「未来」を断ち切るなど許されない [THE JOURNALISTC]

リーガ・エスパニョーラ  《ヘスス・スアレス記者》(2014.1.12:記)
7歳以下の子供達にもチケット購入の義務を課す。バルサが下したこの決定が、物議を醸している。フットボールの世界を支えているのは、幼少時にスタジアムで興奮を覚えた子供達であることを忘れるべきではない。

この世界を支えているのは 「子供が成長した大人」では
●「個人的には今回の決定に反対だ」と前置きしながらも、ロセイ会長は「子供の安全を考えるとこうするしかなかった」と述べている。
 【デポルティボ・ラ・コルーニャの元キャプテンで、2005年に現役を引退した親友のフラン・ゴンサレスと、バルセロナのトレーニング施設「シウダ・デポルティバ」とバルサBのホームスタジアムである「ミニ・エスタディ」を巡ってきた。というのも、実はフランの息子であるニコラスが、現在バルサのカンテラに所属しているため、一緒にトレーニングや試合を観てきたのだ。
 そんな折、寝耳に水の話を聞いた。
「10月26日のクラシコ(レアル・マドリー戦)から、カンプ・ノウでは7歳以下の子供達にもチケットの購入が義務付けられた」
 というニュースだ。クラブ側の発表によれば、「数万人の子供が押し寄せれば、治安上の保証が出来ない」というのがその理由のようだが、私はこの決定に大いに反対である。
( ー 中 略 ー )
 物心がつく前の創造力豊かな子供達がスタジアムに足繁く通い、自然にフットボールを愛するようになり、大人になっていく。スペイン・フットボールの強みは、そのサイクルにある。祖父から父、父から息子へと脈々と受け継がれる“フットボールの血”だ。その系統をバッサリと断ち切ってしまったら、後々に禍根を残すのは間違いない。
( ー 中 略 ー )
 フットボールは裕福な人間だけのモノではない。この世界を支えているのは、幼少時にスタジアムで興奮を覚えた子供達であり、その子供が成長した大人である。それは選手であれ、新聞記者であれ、レフェリーであれ、クラブスタッフであれ、フットボールに関わる誰もが同じはずだ。
( ー 中 略 ー )
 スタジアムで魅力的なフットボールを見せれば、その子供達はこれから何十年もフットボールにお金を落とし、更にはその息子や孫がこの世界を支えてくれる。何故、こんな簡単なことが分からないのか。
 少々暑く語ってしまったが、「7歳以下の子供には無料で試合を見せるべき」というのは、私の譲れない見解である。】

迂闊に「天才」などという 言葉を使ってはいけない
●世界各地から逸材をかき集めているバルサ・カンテラの中でも、眩い輝きを放つ久保君。いまは静かに、彼の成長を見守りたいものだ。
 【話を戻すと、シウダ・デポルティバでは、ニコラスのプレーをフランと一緒に観戦していたのだが、私はすぐに同じチームにいた日本人選手、タケフサ・クボのプレーに目を奪われた。正直に言うが、彼のカリダード(プレーセンス)は驚くべきレベルにある。
 タケ・・・。チームメイトからそう呼ばれる12歳の少年は、世界中から集まって来た同年代の選手の中にあっても、ずば抜けていた。左足で完全にボールとスペースを支配し、攻撃のリズムを巧みに操る。フェイントが終わる前にシュートモーションに入るその動きのキレや判断のスピードは、特筆に値するモノがあった。フットボールを知る者であれば、モノの5分で如何に才能豊かな少年かが分かるだろう。
 聞けば、既にバルセロナでは「日本のメッシ」などと絶賛されていると言う。勿論、アレだけのプレーができるのだから、周りが騒ぎたくなる気持ちも分からないではない。
 タケは、私が過去に見てきた日本人特有の慎ましさ、遠慮、あるいは弱気な部分を全く見せなかった。ピッチではスペイン人の選手より大きな声を出し、レフェリーの判定にも堂々とした態度で抗議する。その猛々しさは少々面食らうほどだった。日本人と言うよりもスペイン人、もしくはスペイン人の中でも気は強いほうに見えたが、ピッチの中で自己主張を続けるのは、決して悪いことではない。
 バルサのスカウトがタケをマシア(下部組織の選手の寄宿舎)に連れてきたのは、必然の結果だったのだろう。マシアは世界各地から選手を招き入れ、人種や国籍にこだわらない自由な雰囲気の中で選手を育てている。いわば、大人でも子供でも誰でも自由に参加できた、昔のストリートフットボールに近い環境が作られているわけだ。
 ただ、ひとつだけ言わせてもらえば、タケは優れたカリダードを持ってはいるが、それはマシアにいる子供たち全員に言えることでもあるのだ。今はタケの技術が僅かに抜け出ていたとしても、10代前半では1カ月、いや1週間で立場が逆転するケースもある。
 バルサ以外のクラブにも、スペインでは同じくらいの技術を持った少年は山ほどいる。だからこそ、10代前半の少年に対し、迂闊に「天才」などという言葉を使ってはいけないのだ。
 私はタケと同年代のカテゴリー(13歳以下)のチームを率いた経験があるが、どんな町のチームにも、大人をハッとさせるカリダードを持った子供は必ずいた。しかし、その才能が心身の成長とともにどういった曲線を描くかは、なかなか分かりにくい。少年の性格や家庭環境、あるいは身体的な遺伝子など、そこにはいくつもの要素が複雑に絡み合ってくる。
 タケやニコラスには、今後も互いに切磋琢磨しながら才能を伸ばしていってもらいたい。なぜなら、フットボールの未来を担うのは彼らだからだ。子供の可能性は無限大。改めてそのことを肝に銘じておきたい。

子供達の無垢な問いには あの名手も思わず本音を・・・
●子供達からの質問に本音がポロリ。「マドリーに残りたいが、今後もいまの状況が続けば」と、カシージャスは冬の移籍を示唆した。
 【レアル・マドリーのGK、イケル・カシージャスの発言についても、少し触れておこう。
「もしこのままの状況が続けば、12月には進退を考えなければならない」
 以前、このコラムで“予言”したことが現実になろうとしている。
 当然といえば当然だろう。カシージャスほどの名手が、“カップ戦要員”などという待遇を承伏(しょうふく)できるはずがないのだ(編集部・注:カルロ・アンチェロッティ監督は、チャンピオンズ・リーグでの先発起用を明言)
( ー 中 略 ー )
 ちなみに、今回この話をカシージャスから聞き出したのは、幼い子供である。そもそも、マドリーやバルサの有力選手は近年、独占インタビューをほぼ受けていない。
( ー 中 略 ー )
イケルはマドリーを出ていっちゃうの?
 ある子供の無垢な問いに対し、思わず本音を漏らしてしまったのだろう。もし質問の主が目をギラギラさせた新聞記者だったら、今回のようにカシージャスの心の内を覗くことは不可能だったはずだ。
 やはり、子供の力というのは偉大だ。多くのジャーナリストが聞きたくても聞けなかったコメントを、いとも簡単に引き出してしまったのだから。
 ロセイ会長、やはり子供達を無下に扱ってはいけないと思いますが、いかがでしょう?】 《この項・了》




《ワールドサッカーダイジェスト:2013.11.21号_No.399_記事》
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