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BRASIL “欧州行き”は3年後でも遅くない [THE JOURNALISTC]

カンピオナット  《ロドリゴ・ブエノ記者》
バルサとマドリーが争奪戦を繰り広げ、欧州行きは間近と伝えられるサントスのFWネイマール。しかし、ブエノ氏はこれに警鐘を鳴らす。“かつての期待の星”の現状を考えても、欧州行きは3年後でも遅くない、と___。

19歳の“ジョイア”を巡る 大西洋をまたいだクラシコ
サッカーに興味のない女性のファンも多く、今やロックスター並みの人気者。姿を見せればサインや写真攻めに。
今、ブラジル国内でサッカー界の枠を超えた人気と注目を集めている男がいる。1994年に帰らぬ人となった伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナ以来の“国民的ヒーロー”と評す声すらある。
 トレードマークは、高さ9㌢のモヒカンヘア(髪の立ち方が気に入らない時は、帽子を被る)。流行のファッションに身を包み、愛車はポルシェ。いつも笑顔を絶やさず、ふざけてばかりいる。一見すると、いかにも今風の若者。“無骨で垢抜けない”というこれまでのサッカー選手のイメージとは、一線を画している。
 弱冠19歳にして名門クラブの看板を背負い、ブラジル代表でも欧州組を押し退けて堂々たるレギャラ−。驚異的なテクニックとプレービジョンを武器に百戦錬磨の猛者を手玉に取り、易々と得点を挙げる。趣向を凝らしたダンスを披露し、実に楽しそうにゴールを祝う。「サッカーをするのが楽しくてタマラナイ」という気持ちが、全身から滲み出ている。
 推定年俸は1200万レアル(約5億円。クラブが管理する肖像権料込み)。大手企業のCMに出演し、テレビの人気バラエティー番組に呼ばれ、週刊誌やファッション誌の表紙を飾る。サッカーファンからはクラブの垣根を越えて愛され、サッカーにあまり関心がない少女達からもロックスター顔負けの人気を集める。
 それが“ジョイア(宝石)”こと、サントスのFWネイマールである。
 この超逸材を巡って、激しい争奪戦を繰り広げているのが、スペインのレアル・マドリーとバルセロナ。大西洋をマタイでの、エル・クラシコだ。
 両クラブがネイマール獲得に本腰を入れたのは、コパ・アメリカ終了後の今年8月だった。双方がサントスに提示した移籍金は、現行契約が定める移籍金の満額に相当する4500万ユーロ(約54億円)。マドリーは、ジョゼ・モウリーニョ監督自らネイマールに電話を入れ、8月中の加入を打診したと言われている。
 しかし、サントスは今年末のクラブワールドカップ優勝は勿論、クラブ創立100周年を迎える来年のコパ・リベルタドーレス連覇を目標に掲げており、今夏に大エースのネイマールを手放す意思が微塵もなかった。ネイマール本人もこれに異存はなく、8月末にサントスのルイス・アウバロ・リベイロ会長は、両クラブに「今ネイマールを売るつもりはない」と断りを入れたという。
 その後、先に動いたのがバルサ。・・・(略)・・・、サントスのリベイロ会長とネイマールの父親に直に接触。移籍金6000万ユーロ(約72億円)、肖像権料別の年俸580万ユーロ(約7億円)という破格の条件で、2013年1月の移籍を申し入れた。
 9月初旬、この情報を元にブラジルの一部の新聞は、「ネイマールの移籍に関して、サントスとバルセロナが合意した」と報じている。
 対するマドリーは、すぐに反撃する。交渉相手はサントスではなく、代理人のワグネル・リベイロ。移籍金(6000万ユーロ)は同額だが、肖像権料別の年俸は700万ユーロ(約8億4000万円)と、バルサよりはるかに多い。
( ー 中 略 ー )
 そして、こんな記事が紙面を埋める。
「サントス、ネイマール、レアル・マドリーの3者は、既に移籍条件の細部に至るまで合意している。しかし、それが明るみに出ると都合が悪いので、この事実を必至に隠している」
 この情報の信憑性を裏付けるのは容易に想像できる思惑だ。サントスのリベイロ会長にとって今最大の関心事は、再選を目指している今年12月の会長選挙。
( ー 中 略 ー )
 こうして移籍報道が日に日に過熱する中、9月19日にネイマールがサントスのクラブハウスで緊急記者会見を開き、キッパリとこう言い切った。
国外のどのクラブとも交渉していないし、勿論合意にも達していない。僕はサントスの選手であり、来年もここでプレーしたいと思っている。次の移籍シーズン(来年1月)にもサントスを出るつもりはない
 少なくとも来夏まではサントスの留まるつもりだと本人が明言したこの会見で、一連の移籍報道はようやく沈静化したのだった。

会長と代理人は兎も角 本人と父親の意向が___
実力は勿論、スター性も抜群のネイマール。今夏のバルサとマドリーが引き抜きを画策したが、結局はサントス残留に落ち着いた。
【11歳からサントスの下部組織で育ったネイマールに、欧州のクラブが初めて触手を伸ばしたのは、彼が未だ13歳だった05年。ネイマールを入団テストに招いたマドリーが、その類稀な才能に驚愕し、丁度バルサがリオネル・メッシを迎え入れた時と同じように、家族ごとスペインに連れて来ようと画策したのだ。
 マドリーのこの企みを察知したサントスは、法的にはプロ契約が不可能な年齢ながら、契約金として父親に100万レアル(約4200万円)を手渡し、更に事実上の給料として毎月2万5000レアル(約105万円)を支払うと約束。慰留したとされている。
 09年にプロデビューを飾ってからは、ACミラン、インテル・ミラノ、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどから獲得の打診があった。・・・(略)・・・サントスと15年8月まで契約延長し、違約金は4500万ユーロ(約54億円)まで引き上げられた。
 現在、ネイマールの移籍交渉がこれだけ複雑化しているのは、第一にサントスのリベイロ会長が「できるだけ高く売りたい」と考えているから。
( ー 中 略 ー )
 たしかに、今年のクラブワールドカップ、更に来年のロンドン五輪で戴冠に貢献すれば、その価値は間違いなく更に高騰するだろう。
( ー 中 略 ー )
 移籍交渉の窓口となるワグネル・リベイロは、前述した通りマドリー寄りの代理人。自分に無断で父親やサントスと接触したバルサに憤慨しており、今後もこれまでと同じくマドリー移籍の方向で動いていくだろう。
 一方、ネイマールの父親と本人の意向は、なかなか見えて来ない。ネイマールは「サントスでとても幸せ。できるだけ長くここでプレーしたい」と繰り返すばかり。将来的な欧州メガクラブへの移籍を夢見ているのは間違いないが、マドリーとバルサのどちらを希望しているのか、判然としない。
 では、ネイマールはいつどのタイミングで、どこに移籍するのが望ましいのか___。
( ー 中 略 ー )仮に来年1月に加入するなら、より出場機会がありそうなマドリーを選択すべきか。
 とはいえ、チームが半ば固まっているシーズン途中の加入は、どんな選手にとっても容易ではない。移籍時期は来夏が妥当だろう。

3年後のW杯を戦ってから 満を持してのタイミングで
代表デビューから僅か1年で確固たる地位を確率。10月7日のコスタリカ戦でも決勝点をマークした。
私の本心を打ち明ければ、ネイマールにはできるだけ長くサントスでプレーして欲しいと心から願っている。今やこの“ジョイア”はブラジル・サッカー界の象徴的存在であり、その去就いかんで国内サッカーの盛り上がりに雲泥の差が出るはずだからだ。
 サッカー界の中心は欧州であり、真のワールドクラスとなるには欧州に渡る必要がある−ー−。
 そんな近年の常識は果たして真実なのか。欧州でプレーしなければ、本当の超一流プレーヤにはなれないのか。欧州への移籍が、全ての選手にとってステップアップに繋がっているのか。我々ブラジル人は、これらの問いを造作もなく打ち消せる。
 05年夏に21歳のロビーニョが移籍金2400万ユーロ(当時のレートで約35億円)でマドリーに新天地を求めた時、メガクラブで大きな成功を収め、いずれ世界ナンバー1の選手に成長するだろうと、多くのブラジル人が夢を見た。結果はご存知の通り。
( ー 中 略 ー )
 07年夏、弱冠17歳にしてインテルナシオナウからミランに電撃移籍したアレッシャンドレ・パットもまた、
( ー 中 略 ー )
 最も悲惨な例は、バイエルン・ミュンヘンのブレーノだろう。
( ー 中 略 ー )度重なる怪我で精神のバランスを失い、妻との不和も重なって今年9月下旬、自宅への放火容疑で警察に身柄を拘束されるという悲劇の運命を辿っている。
 サンパウロで確固たる地位を築き、肉体的にも精神的にも成熟してから欧州に渡っていれば___。少なくとも、自宅への放火というエキセントリックな事件は起こさなかっただろう。
 事情は多種多様だが、若くして欧州のメガクラブに移籍しながら、伸び悩んでいる“かつての期待の星”は枚挙に暇がない。むしろ、近年はそんなケースが増えている印象すらある。
 国内に留まっても、クラッキには成れる。既にネイマールは、欧州へ渡った先輩達を追い越してセレソンで絶対的な地位を確立。驕り高ぶらずに心身両面を磨いていけば、母国にいながら“世界ナンバー1”の称号を得るのも不可能ではないはずだ。時代錯誤に聞こえるかも知れないが、サントスの偉大なる大先輩であるペレは、約40年前にそれを成し遂げている。
 ブラジルの急速な経済成長と欧州通貨に対するレアル高を背景に、ネイマールのようなスター選手は、今や国内でも欧州と遜色のない高給を得られる。少なくとも、マネーを理由に欧州行きを決断する理由は見当たらない。
 何も私は、ネイマールが選手生命を国内で全うすべきだと言いたいわけでは決してない。ただ、実現性が低いのは百も承知だが、せめて14年ワールドカップまではサントスに留まったほうが、賢明だと考える。
 ネイマールがワールドカップで大車輪の活躍を演じてセレソンを戴冠に導けば、その年のFIFAバロンドール受賞も夢ではないだろう。3年後でも未だ22歳。それから満を持して欧州へ渡っても決して遅くはないと、私はそう考えている。】 《この項・了》



《ワールドサッカーダイジェスト:2011.11.3号_No.350_記事》
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