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メ ン タ ル 講 義_第9回 [世界のサッカー事情]

スペイン人スポーツ心理学者が 選手や監督の“内面”を解説

※ 選手や監督が抱える様々な悩み ※
プロの選手や監督はもとより、近年は下部組織に所属する少年までが、 心理カウンセラーの下を訪れ、カウンセリングを受けているという。 抱える悩みや問題は、年齢や立場によって千差万別だ。

[ 扱いには細心の注意が必要 ]
 今回は、心理カウンセリングを必要とする選手や監督が抱える問題について、お話したいと思います。一般的にはあまり知られていない事実ですが、自身のキャリアを実りあるものにするために、心理カウンセラーにサポートを求める選手や監督の数は、近年、確実に増えてきているのです。
 では早速、選手から見ていきましょう。選手が抱える悩みや問題は、年齢や立場によって大きく異なります。そこで、年代別に3つのカテゴリーに分けて解説していくことにします。
【10代前半の少年】この年代は、本人ではなく親御さんがカウンセリングを依頼されるケースが大半です。本人以外がカウンセリングを望んでいるというのは、正直なところ、カウンセラーとしては非常にやりづらいモノがあります
 相談に来られる親御さんの多くは、将来、自分の息子がスター選手になるものと信じて疑っていません。自身が叶えられなかった夢を息子に託し、無意識のうちに(あるいは意識的に)プレッシャーを掛けているのです。言うなれば、身勝手な願望を子供に押し付けているわけです
 行き過ぎたプレッシャーに晒された子供達は、サッカーが楽しめなくなったり、あるいは親の期待に応えられずフラストレーションを溜め込んでしまいます。極端な場合は、監督よりも父親の言葉に従い、監督の仕事に支障が出るといったケースもあるのです。
 こうした親御さんはほぼ例外なく、過度の期待が我が子を苦しめているという自覚がありません。従って、まずは彼らにそれをハッキリと認識させ、態度を改めさせる必要があります
 この年代の少年は、大人が思っている以上にデリケートです。実際、大きな可能性を感じさせていた少年が、様々な試練に直面する中で、急激に輝きを失っていくといった事例は星の数ほどあります。それだけ扱いには細心の注意が必要なのです
 テクニック、フィジカル、メンタル、戦術理解力など、フットボーラーに必要な能力がもっとも伸びるのは16〜17歳と言われていますが、この年齢に達するまでをどう過ごすかが将来の伸び幅を決めると言っても過言ではありません。健全な心理状態でサッカーに打ち込めるよう導くことが、我々カウンセラーに求められる役割なのです
【下部組織所属のハイティーン】同じティーンエイジャーでも20代に近付くと、契約を結んでいる代理人や所属クラブを介しての依頼が増えてきます。
 10代後半というのは多感な時期であると同時に、子供から大人へと移行していく変わり目です。初めて給料を貰ったり、一人暮らしを始めたり、恋人が出来たりと、様々な変化が起こります。そんな青年をより良い社会人、そしてプロフットボーラーへと成長させるために、我々は心理面はもとより、健康面や生活面までサポートしているのです
 代理人やクラブの関係者が連れてくるのは、悩み多き青年達です。周囲の環境や初めて暮らす町に馴染めなかったり、あるいはプロ選手に成れるか否かという心理的プレッシャーに押し潰されそうになったり、抱える悩みは様々です。心理カウンセラーには、それぞれの悩みに応じた適切な対応が求められます

[ カウンセラーの“お得意様” ]
凄まじいプレッシャーに晒され、ストレスを溜め込んでいる監督が、カウンセリングに頼るのは当然だ。
【プロ選手】20代〜30代のプロ選手は、本人の意思で心理カウンセリングを依頼してくるケースが大多数で、その悩みはポジションやチーム内でのステータスなどによって千差万別です。例えば、何試合も得点から遠ざかっているストライカーが、ゴールを欲するあまり、チャンスが巡ってきても身体が思うように動かないと訴える事例が良くあります。こうしたケースでは選手に自信を取り戻させると同時に、プレッシャーから解放してやり、自然体でプレーできるよう導くことが肝要です
 自信喪失といえば、監督の構想から漏れ、ベンチ生活が続く選手もそう成りがちです。こういった場合は、まず自分の置かれた立場を受け入れさせ、そのうえでレギュラー奪還を目指して練習に取り組めるよう、前向きな意識を持たせることが重要です。
 また、故障明けの選手が怪我の再発を恐れ、不安感に苛(さいな)まれながらプレーしているという悩みもよく聞きます。このような時は、恐る恐るプレーしているほうが、かえって怪我を再発させかねないと言い聞かせます。恐怖心に駆られた選手はストレスを溜め込み、その結果、筋肉が硬直して怪我を引き起こし易くなるのです
 その他、集中力やモチベーションの維持、試合中のペース配分の仕方などカウンセリングの内容は様々です。選手の自宅が遠かったり、あるいはチームの遠征が続いたりといった理由から、多くの場合、実際に顔を合わせるのが難しいため、私は主にTV電話を使ってカウンセリングを行なっています。
 私の担当ではありませんが、マドリーのクリスチアーノ・ロナウドやペペのように、精神的にとりわけ不安定だと認められる選手に関しては、クラブが心理カウンセリングを受けるよう指示することもあります。但し、カウンセリングというのはカウンセラーと患者の信頼関係が何よりも大切です。従って、クラブを介さず、個別に連絡を取り合うのが最適な方法でしょう
【監督】心理カウンセラーにとって監督は、“お得意様”と言える存在です。選手であれば、精彩を欠いたプレーが何試合か続き、仮にバックアッパーに降格しても、その後のプレー次第ではレギュラーに復帰できる余地があります。ですが監督の場合、結果が伴わなければ即座にクビを宣告されかねません。そのプレッシャーたるや尋常でなく、ストレスは溜まる一方です。そんな監督達がカウンセリングに頼るのは当然と言えるでしょう
 現場指揮官たる監督は、20人を超える選手を管理しなければなりません。しかし、その全員と理想的な関係を築くのは不可能と言っていいでしょう。選手にはそれぞれ個性があり、考え方や求めているモノが異なるからです。
 イニエスタやベンゼマのように、常に周囲からの愛情を必要とするナイーブなタイプがいれば、ピケやマルセロのように、外交的で、監督の厳しい苦言やメディアの批判にも動じない図太い選手もいます。私は監督に、各選手の性格的な長所と短所を正確に見極める方法と、それぞれの個性に適したコミュニケーションの取り方を指南しています
 カウンセラーは更に、メディア対応の指導も行なっています。記者会見などで監督がメディアを通じて発言する際は、時にクラブの代表者という立場でモノを言わなければなりません。つまり、それだけ影響力が大きく、発言には細心の注意を払う必要があります。私は心理カウンセラーとして、エモーショナル・インテリジェンス※編集部・注を向上させるためのアドバイスを与え、更に状況に応じた発言ができるよう指導しています
 ※編集部・注:自分の感情をコントロールし、なおかつ相手の感情を理解して、対人関係を上手く処理すること




《ワールドサッカーダイジェスト:2012.5.3号_No.362_記事》
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