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いつだって楽天南米_No.162 #360 [世界のサッカー事情]

かつての英雄達が今以上に、嫉妬するくらい偉大になって

【少し前の話になりますが、今年1月9日、メッシが3年連続でFIFAバロンドールの栄冠に輝いた時のことです。往年の名選手で、現在はレアル・マドリーの名誉会長を務めるアルフレッド・ディ・ステファノは、コメントを求められると開口一番にこう言いました。
「A mi que me importa que Messi tenga tres balones de Oro ?(メッシがバロンドールを三度受賞したからって、それが何だっていうんだ?)」
 続けてディ・ステファノは、自分も二度受賞していること、サッカーはチームスポーツであって、個人タイトルは一人の栄誉ではないことを強調していましたが、それにしても、「A mi que me importa ?」は「どうでもいい」とか「構うもんか」といった意味合いを含んだ表現です。レジェンドの口からそんなフレーズが飛び出すとは、誰も予期していませんでした
 メッシが三度目のバロンドールに輝いた事実は、勿論「どうでもいい」ことではありません。実際、受賞のニュースはアルゼンチンでも大々的に報じられて、国民を大いに喜ばせました。どうしてディ・ステファノともあろうお方が、まるでファンを煽るかのように、「ダカラ何なのだ?」と言い放ったのか。アルゼンチン国内のメディアはその言葉を見出しに打って、嫉妬心の表れだと報じていました
 自分自身の偉業や成功を、得意然として周囲に話す。アルゼンチンでは、特に珍しい行為ではありません。でも、他人の功績について問われた時まで、自分の成功を主張するのは、やっぱり大人気ないです。それではまるで、「○○君だけじゃなく、僕だって頑張ったよ!!」とアピールしている子供と一緒。世界中のサッカー愛好家から敬愛されるディ・ステファノらしくないと思ったのは、きっと私だけではないはずです。
 メッシのバロンドール受賞を受けて、「俺もスゴイ選手だった」と思わず自分をアピールしてしまったのは、ディ・ステファノだけではありません。今まではメッシを手放しで絶賛するだけだったマラドーナも、先日、遂に言ってしまったの。
メッシマラドーナより凄いと、そう誰かが言っているのを聞く度に、笑ってしまうよ。メッシは確かに、俺と比較されるだけのプレーを見せていると思うが、まだキャリアの途中だ。まずは彼が“歴史を作る”のを待とうじゃないか。どちらが優れているか。それが判断できるのは、メッシがキャリアを終えてからだ」
 言葉の端々に、マラドーナの焦りを感じます。以前は「メッシは俺の後継者だ。いつか俺を追い抜いてくれると願っている」と、そんな余裕さえ見せていたのに、「笑ってしまう」と感情を露にしたマラドーナの発言は、メッシを必要以上に意識するライバルのそれでした。本当に抜かれるかも知れない———。そんな危機感を、マラドーナは募らせているのでしょう
 また、「歴史を作るのを待とうじゃないか」と語った言葉の裏に見え隠れするのは、「俺はワールドカップで優勝している」という強烈な自負。現時点でメッシはまだ自分を超えていないと、暗にそう主張しているようにも感じ取れました。
 2月29日に行なわれたスイスとの親善試合で、アルゼンチン代表では初となるハットトリックを達成したメッシ。これで代表での得点数を22まで伸ばし、通算ゴール数で歴代の5位に浮上しました。3位のマラドーナとの差は、12ゴール。24歳という年齢を考えれば、メッシが偉大な先輩の記録を追い抜く可能性は、十分にあります
 私にとってのマラドーナは、比較の対象など存在しないくらい別格中の別格です。50年代から60年代に掛けてマドリーの試合を観ていた人ならば、ディ・ステファノほど偉大なサッカー選手はイナイと、今でも固く信じているでしょう。にもかかわらず、マラドーナディ・ステファノも、焦りや嫉妬の感情をオモテに出してしまうなんて・・・。それだけメッシの勢いが、凄まじいということなのでしょうが
 憧れのマラドーナには申し訳ないけれど、往年の英雄達が今以上に嫉妬するくらい、メッシにはもっともっと偉大になってもらいたいと願っています!!】 《この項・了》




《ワールドサッカーダイジェスト:2012.4.5号_No.360_記事》
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