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ニュースの裏側_News number・14 [世界のサッカー事情]

中国サッカー界の光と闇
“オモテ”だけでは分からない 気になる報道の“ウラ”を読む
世界第2位の経済大国に躍り出た中国。今冬に上海申花(しゃんはい・しんか)がアネルカを獲得して注目を集めるなど、その好況は間違いなくサッカー界にも影響を与えている。だが、華やかに見える舞台の裏側では———。

[ アネルカの年俸は世界最高のレベル ]
欧州のトップシーンに別れを告げ、サッカー後進国に舞い降りたアネルカ。上海申花が彼に支払う年俸は、推定で約11億円と言われる。
3月10日に新シーズンが開幕する中国スーパーリーグ(CSL)。16チームで争われる“超級”の最大の注目は、広州恒大(こうしゅう・こうだい)を王座から引きずり下ろすチームが現われるかどうかだろう
 2009年のシーズン終了後、中国サッカー協会は八百長に関与した制裁として、広州(当時は広州足球倶楽部)に2部降格を通告した。しかし、中国の故事に「塞翁が馬」とあるように、この災いがクラブの運命を好転させる。中国屈指の不動産会社である恒大地産にバーゲン価格(約1億円と言われている)で買い取られ、莫大な額の投資がスタートするのだ。オーナーは、好景気に沸く中国でも指折りの富豪であるシュ・チャイン。チームは10年に2部優勝で昇格を果たし、勢いをそのままに昨シーズンは堂々のCSL制覇。今シーズンはCSL連覇に加え、アジア・チャンピオンズ・リーグの優勝を見据えている。僅か2年という短期間で、恥辱にまみれたクラブは国内ナンバーワンの地位を確立するに至ったのだ
 広州恒大の陣容は強力だ。かつて北京国安(ぺきん・こくあん)を名門へと押し上げた韓国籍のイ・ジャンスを監督に迎え、ガオ・リン・、スン・シャン、ジャン・ジら新旧の中国代表選手がずらりと顔を並べる。助っ人はエースFWのミュリクイと、ブラジル全国選手権で2年連続MVPに輝いた経歴を持つアルゼンチン人MF、ダリオ・コンカ。昨シーズンの途中にフルミネンセから加入したコンカの年俸は、約1050万ドル(約8億3000万円)と破格で、他の主力選手のサラリーもナカナカの高水準だ。
 この広州恒大の持つ圧倒的な経済力が中国サッカーの移籍市場を歪め、昨今のCSLでは、選手達が高額な年俸を求める傾向が強くなっている。強豪クラブは従来の資金力では戦力を維持できなくなり、大口スポンサーの獲得に奔走しつつ、成り金オーナーへの身売りの噂も後を絶たない。岡田武史・前日本代表監督が新指揮官となった杭州緑城(こうしゅう・りょくじょう)、元ガンバ大阪監督のヨジップ・クゼが率いる天津泰達(てんしん・たいたつ)、更には、かつてバルセロナでフランク・ライカールト監督の右腕として鳴らしたヘンク・テン・カテが指揮を執る山東魯能(さんとう・ろのう)などが上位を賑わすことになりそうだ。しかし最も注目を集めるのは、やはり上海申花(しゃんはい・しんか)だろうか。
 07年にIT起業家のズ・シュンによって買収され、巨額投資を繰り返してきた上海申花は、国内とアジアの双方で無残な結果に終わった昨シーズンの反省を受け、今オフは派手な補強に動いた。フランスからジャン・ティガナを新監督に招き、チェルシーから元フランス代表ニコラ・アネルカと、CSLでの実績十分の元オーストラリア代表MF、ジョエル・グリフィスを獲得。更には、ディディエ・ドログバの引き抜きを画策中で、こちらは元僚友のアネルカが説得に当たっているようだ。「元々アジアには好印象を持っていたんだ。だから上海からのオファーが来た時は、一もニもなく飛びついたよ」と語るアネルカ。その年俸は世界を見渡しても最高レベルの、約1400万ドル(約11億円)と言われている
 次に中国にやって来る大物は、ドログバか、デコか、それともロナウジーニョか。世界第2位の経済大国に躍り出た国のサッカーリーグは、名を売りたい野心家オーナー達による“ビジネス・ゲーム”の様相を呈している。】

[ まさに負の連鎖。内情は危機的状況だ ]
新主席就任が有力視されるシー・ジンピンは大のサッカー好きだ。改革の陣頭指揮に立つのではと期待も。
【確かにCSLは華やかだろう。だがそれを支えている中国サッカー界は、問題が山積みだ。
 全体的なサッカー人気そのものはまずまずだが、ファンの殆どはイングランドやスペインなど欧州リーグに関心を寄せている。国内トップリーグであるCSLの人気はお世辞にも高いとは言えない。広州恒大と北京国安を除けば観客動員はパットせず、ゲームやリーグ運営のクオリティーにも疑問符が付く
 やはり、ここ数年で相次いで発覚した八百長やクラブ幹部による汚職など、数え切れないほどの不正行為が、中国サッカーのイメージを著しく傷つけている。ファンの信頼を回復し、正常な状態に戻るには、相当の時間が必要だろう。つまり、昨今のCSLにおける経済的な繁栄(いくつかの限られたクラブの繁栄と言うべきか)は、リーグの成功に直結していない。テレビ放映権料や入場料などによる収入は、実に微々たるモノだ
 中国代表チームの弱体化も顕著で、こちらは問題の本質が根深い。CSLの発展・成長は不可欠だが、統括する中国サッカー協会の価値観が変わらなければ、改善は見込めないだろう。中国の場合は他国の協会のような、いわゆるスポーツ団体ではなく、政府(共産党)の要人が直轄管理している。その多くは、サッカーはおろかスポーツの知識さえまるで持たない面々で、とりわけ草の根レベルでの普及や若手の育成については、何ら対策を講じていない。中国代表は既に、2014年ブラジル・ワールドカップの出場権を失っている。なんとアジア最終予選にさえ駒を進められず、3次予選で姿を消してしまったのだ。
 長きに渡り中国サッカーを支えてきたのは膨大な競技人口だが、近年のイメージダウンと他のスポーツ(バスケットボールなど)の台頭により、サッカーをする子供が激減しているのも気になるポイントだ。完全に負の連鎖に苛(さいな)まれており、危機的状況とも言える。
 課題を挙げれば切りがない。まず、汚職や八百長を一掃しなければならない。随分と改善はされたが、信じられないことに未だ黒い影が見え隠れする。若手の育成にも本気で取り組み、全国的なコーチングのネットワークや、CSLの各クラブにユースシステムの確立を促すなど、抜本的な改革が必要だろう。ひとつの光明は、今秋に新国家主席となる可能性が高いシー・ジンピン(現副主席)が、大のサッカーファンという点だ。彼がサッカーの対して本格的にイニシアチブを取り、この状況を改善するために立ち上がるのではないかと期待されている
 復建への道のりは険しい。だが基本的なインフラさえ整えば、中国サッカーは飛躍的に成長する可能性を秘めている。実際に中国代表と国内リーグは、環境が整った時には相応の結果を残してきた。1990年代半ばから2000年代初頭に、大手不動産会社の大連万達(だいれん・わんだ)が中国サッカーを強力にバックアップし、その結果、中国代表は2002年ワールドカップ本大会の切符を手に入れ、国内リーグは活況を呈した。現在の惨状は、その大連万達が中国サッカー界の汚職に抗議する形で、サッカーから距離を置いてから始まったモノだ(大連万達は昨年7月に中国サッカー協会と3年契約を結び、CSLの公式スポンサーとなった)
 サッカーの発展にマンパワーを結集させ、山積する問題を解決できれば———。CSLが日本や韓国に優るとも劣らない、アジア最強リーグの称号を勝ち取るのも夢ではないだろう。特定のクラブが巨額投資を続けるだけでは、この国のサッカーの窮状は救えず、枠組みは何も変わらないままだ。】




《ワールドサッカーダイジェスト:2012.3.15号_No.359_記事》
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