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ITALY カルチョ・スキャンダルの新展開 [THE JOURNALISTC]

[サッカー][目]  [手(グー)]
セリエA(アー)  《ジャンカルロ・パドバン記者》
カルチョ・スキャンダルの処罰に伴い、繰り上げで2005ー06シーズンの優勝を認定されたのがインテルだ。今になって何故、そのスクデットの剥奪が議論されているのだろうか。新展開に対するパドバン氏の見解は?

新たな通話の傍受記録から 捜査官が結論付けたのは...
ピッチの上でセリエA制覇を成し遂げた06ー07シーズンのインテル。その前年の記録上のスクデットは、剥奪されてしかるべきなのか。
【読者の皆さんに予めお断りしておきたいのが、私の立ち位置だ。2002年10月から08年1月まで5年と3カ月、イタリア北西部のトリノに本拠を構えるスポーツ紙『トゥットスポルト』の編集長を務めた人間が、この原稿の執筆者なのだとご承知頂きたい。トリノという土地柄、購読者のメインターゲットと位置付けていたのは、ユベントスとトリノのサポーターである。
 2006年に起こったカルチョポリ(カルチョ・スキャンダル)は、巨大な欺瞞(ぎまん)だ。私のこの考えは、当時も今も全く変わらない。何故、欺瞞だと言い切れるのか。それはユーベだけを厳しく処罰し、いわばスケープゴートにしただけでこの不正事件を幕引きにしたからだ。イタリア・サッカーのシステム全体を問題にしたわけでも、関わった全員を捜査と処分の対象にしたわけでもない。
 それゆえ今回は、満足の意を表明しないわけには行かない。イタリア・サッカー連盟(FIGC)のステーファノ・パラッツィ捜査官が、インテル・ミラノにも不正行為がアッタと結論付けたからである。その根拠としているのは、カルチョポリの首謀者となったルチアーノ・モッジが追加資料として提出した電話傍受記録の内容だ(編集部・注:インテルの当時の会長ジャチント・ファッケッティが、レフェリーの人選に関して審判協会の幹部に圧力を掛けたとされている)
 勿論ユーベが、5年に渡った欺瞞との闘いで勝利を収めたわけではない。しかし、闘いに敗れたわけではないと言い切れる。確かなのは、世論が疑いを持ち始めていることだ。カルチョポリはこれまで喧伝されて来た通り、イタリア・サッカー史上最高のスキャンダルだったのかと。事実、1980年に起こった八百長スキャンダルは、試合直後のスタジアムにパトカーを乗り入れた警官が、ロッカールームで選手を逮捕・拘束する事態となっている。世間に与えたショックは、ACミランとラツィオがセリエB降格処分を受けたこの事件の方が、はるかに大きかったのだ。
 100㌫正直でクリーンな人間やクラブなど存在しないという現実に、世間は気付き始めてもいるだろう。マルコ・マテラッツィが純白のタキシードを着てインテルのクリーンさをアピールしたのは、趣味の悪い茶番劇だったということや(編集部・注:昨シーズン限りでインテルを退団したマテラッツィは、その後マスコミの前でファッケッティの潔白を主張した)インテルに与えられた05ー06シーズンのスクデットの位置付けが、改めて議論されるべきだということについてもだ。あのスクデットは、インテルがそれまで被って来た損害の罪滅ぼしであるかのように、不当な形で与えられたものなのだ。

次の理事会であり得るのは スクデットの剥奪処分だけ
●不正行為の根拠は通話の傍受記録。カルチョポリの主犯となったモッジの弁護団が、追加資料として提出したモノだ。
●故人の名誉を損なう事件の新展開に、モラッティ会長は不快感を隠さない。ファッケッティの無罪潔白を主張し続ける。
パラッツィ捜査官は2006年、カルチョポリのスポーツ裁判で検事を務め、ユーベだけでなく、ミラン、ラツィオ、フィオレンティーナ、そしてレッジーナのセリエB降格を求刑した人物だ。今回はナポリ裁判所で進められているカルチョポリ関連の刑事裁判で、モッジの弁護団が追加資料として提出した新たな電話傍受記録を検証し、インテルにもFIGC憲章に抵触する行為がアッタと結論付けている。FIGC憲章の第1条(フェアプレー精神)と第6条(スポーツにおける詐欺行為)に抵触するというのだから、インテルに与えられた05ー06シーズンのスクデットは、クリーンでもフェアでもなかったことになるだろう。
 ここでハッキリさせておきたいが、だからといってそのスクデットがユーベの下に戻るわけではない。そうなるのは、ナポリで進められている前述の刑事裁判が結審し、2006年のスポーツ裁判が見直しを迫られた場合に限られる。少なくとも現時点では、すなわち次回のFIGC理事会で下されうる処分は、インテルに与えられた05ー06シーズンのスクデットの剥奪だけだ。それ以下はアッテも、それ以上はナイだろう。換言すればユーベは、勝負を引き分けには持ち込めても、勝てるわけではない。
 それだけでも大きな一歩には違いないが、十分だとは言い難い。この意見には、私も賛同できる。ユーベにとってのカルチョポリは、消すことの出来ないクラブ史上の傷であり続けるだろう。全ての偏見を排し、客観的かつ正当に見直され、評価されるようになるまでには、多くの時間が掛かるはずだ。事件の発端から結末に至るまで、どのようなメカニズムが働いていたのか。事件の核心を知るためには、さらなる調査が不可欠。サッカーの世界だけでなく、政界や財界にまで対象範囲を広げた調査が、ダ。この話を更に掘り下げるのは、今は止めておく。
 確認しておくべきは、現在進行形で進んでいる出来事についてだろう。パラッツィ捜査官による電話傍受記録の検証を経て、明らかになったのは以下の2点だ。
① 2004ー05シーズンの行為は既に時効が成立しており、スポーツ裁判の対象にはならない。従ってインテルの不正行為が証明されたとしても、処罰の対象にはなり得ない。
② 2005ー06シーズンのスクデットは、それが与えられたのと同じ理由で剥奪されうる。
 最初の点についてはインテルが時効を受け入れず、不正行為がアッタというパラッツィ捜査官の結論の正否を争おうとする場合にのみ、裁判が開かれる。インテルのマッシモ・モラッティ会長はそうするつもりがないと明言しており、その理由として不正行為の当事者とされるファッケッティ元会長が既に故人であることを挙げている。
 それとは別に、いずれにしてもインテルは犠牲者なのだとモラッティは固く信じているようだ。私に言わせれば、インテルが犠牲者ならばユーベも同じ理由で犠牲者となるはずだが、モラッティにはこうした真っ当な議論を受け入れるつもりはナイだろう。インテルのコノ会長は、既にこの世にいないファッケッティの名誉を損なうのは不当であり、許されないと強弁する。私の目には、その主張を盾にして、真相の究明を避けようとしているようにしか映らない。

権限を握るFIGC理事が 判断を避けようとする理由
【現在進行中の二つ目の出来事、すなわち05ー06シーズンのスクデットの行方がどうなるかは、それを左右しかねない問題がある。インテルのスクデットを剥奪するか否かを決定すべき立場にあるFIGC理事会のメンバー達が、あらゆる手段を使って判断を避けようとしているからだ。
 剥奪するにせよ、インテルのスクデットを改めて正当化するにせよ、誰かの恨みを買う羽目にはなるだろう。判断を避けようとしているのは、恨みを買いたくないからだ。だからこそ、こう主張し続ける。FIGCの理事会には、そのような権限がナイのだと。
 どうやら理事たちは、忘れているようだ。問題のスクデットがどのような経緯でインテルに与えられたかを。どうか思い出して頂きたい。アレはスポーツ裁判の結果ではなく、政治的な決定だった。・・・(略)・・・。報告書の第20項には、こう明記されている。
「FIGCは特定のケースを巡る論理的、倫理的な判断に基づき、それが適当だと判断される場合は、リーグ戦を首位で終えたクラブにスクデットを与えないという決定を下す権限を持つ。例えば、ハッキリと検証されて証拠がなくとも、当該チームが不透明な行為を働いたと判断される場合がそれに当たる」
 現時点でその判断を下す権限は、FIGCの理事会にある。捜査官のパラッツィがインテルの不正行為を指摘したのだから、「スクデットを与えない」ケースに該当するのは明らかだ。
 問題は、理事の大部分が及び腰になっていること。こんな厄介事には関わりたくないと言わんばかりにだ。・・・(略)・・・。
 このままでは、本来下されてしかるべき正しい判断が、理事たちのサボタージュにより下されないまま幕引きとなる可能性がある。・・・(略)・・・。
 もしそうなれば、ユーベの戦いは引き分けどころか、またもや敗北に終わるだろう。幸いにも、アンドレア・アニエッリ会長の姿勢は明確だ。ユーベに対するリスペクトを、他のクラブと同等の扱いを要求する。彼らの主張はそれ以上でも以下でもない。
 その要求が満たされ泣ければ、異なる法的手段に訴えたとしても可笑しくない。スポーツの範疇(はんちゅう)を超え、一般の民事訴訟に持ち込めば、議論は更に複雑化するはずだ。FIGCの理事たちがそのリスクをどこまで自覚しているのか、私には分からない。】 《この項・了》


《ワールドサッカーダイジェスト:2011.8.4号_No.344_記事》
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